「本当の自分」は眼鏡をかけてリュックを背負って……
石山 でも普段の私は眼鏡をかけて、リュックを背負って、靴はスニーカーで声も低い。当時はその格好で大学にも行っていました。仕事にも普段の服装で向かって、現場で用意してもらった“女性らしい衣装”にさっと着替えて……。
――変身しているみたいな感覚?
石山 そうですね。最初はその感覚を楽しめていたんですけど、徐々に「クッキーの型抜きで自分を型どりして、量産した自分を仕事のために納品している」みたいな違和感を持つようになって……。
「若い女性はキラキラしていて高い声で喋りますよ」みたいなパフォーマンスを頑張ってメディアで見せていくのは、本当の自分ではないと思ったんです。その姿をそのまま「石山蓮華」だと思われるのも心苦しかったし、「このパフォーマンス自体が社会にどんな影響を与えているのかな?」とも考えるようになりました。
それに私は、どんなに頑張ってもキラキラした女性にはなれなかった。キラキラした人たちにすごい憧れるし大好きだけど、真似してもうまくできませんでした。
電線好きを公言して“無理のない自分”になった
――その後メディアで電線愛好家の姿を見せていきますが、抵抗はなかったのでしょうか。
石山 抵抗はなかったです。「清純派でいてくださいね」と言われるよりは、「電線好きって言いながら勝手にやってる人なんだ」って思われた方がとても楽でしたね。
それに「電線好き」と公言してから、意外とそれを受け入れてもらえたんです。例えば、「石山さんの話を聞いてみると、いろんな電線があって面白いね」とか、「街中で電線を見るようになったよ」なんて声も寄せてもらえるようになりました。
――電線愛好家という側面を見せてから、ご自身にはどのような変化が生まれましたか。
石山 芸能活動をする時にも「電線」をキーワードに会話ができたり、こういう人だと思ってもらえるようになったりして、安心しましたね。“無理のない自分”になったと思います。
私、世間話が苦手なんですよ。でも仕事上で「電線の人」だと認識されていると、雑談の1つとして電線の話もできる。好きな話だけで会話を進められるんです。だから電線には、ものすごく助けられています。
それこそ、私がひとりでボーッと電線を見ていても「石山さんは電線が好きな人だから」と思われて丸く収まる。電線に少しでも興味を持ってくれる方はそこでお話もできますし、興味がなければ私のことをそっとしておいてくれます(笑)。
――電線のおかげで、人との関わり方も変わっていったんですね。
石山 自分が楽しく向き合えるものが何かひとつでもあると、自分を救ってくれる。だからほかの人にも「自分の『偏愛』があれば、それを大切にしてね!」と伝えたいですね。そうすることで私自身、「自分はこれでいいんだ」と思えたし、自分に少し自信が持てるようになったと思います。
――電線愛好家として、今後はどんな活動をしていきたいですか。