「天気が崩れると体調も崩れる」という松本孝美さんの一言で、今回は「天気痛」を深掘りしてみることに。天気と体の関係を研究する“天気痛ドクター”佐藤純先生にお話を伺いました。
佐藤 僕は、自律神経と痛みの関係についての研究を長年続けておりまして、原因不明の慢性痛を抱える患者さんたちを1万人以上診察してきたんです。その中で、もしかすると、気圧や温度や湿度が変わったり、雨が降ったり風が吹いたり、そういった気象の変化と患者さんたちの症状には何か関係があるのではないか? と考えるようになり、実験や研究を重ねました。
もともと「気象病」という大きなカテゴリーはあって、医学事典にも載っているんです。気温が上がれば熱中症になるのもそのひとつ。その中で、僕が専門とする「痛み」を伴う症状、特に片頭痛や緊張型の頭痛などが、天気の変化によって引き起こされる、という事実を明らかにしました。そこで僕は、そういった病態を「天気痛」と名付け、クローズアップしたんです。
松本 つまり、気圧の変化が体調不良を引き起こす、ということですか?
佐藤 ただ、気圧と体の関係については、昔からいろいろな意見があるんですが、どれもきちっとしたエビデンスがない。例えば、天気が崩れると関節が痛んだり古傷が痛んだり、肩・首が痛んだりするのは、気圧が下がることで関節が膨れるからとか、血管が膨張するから神経を圧迫するとか、そういうことがネットに書いてありますが、そのどれもが本当かどうかわからない。
富士山の頂上に登ったりしない限り、日常生活で体験する気圧の変化はそれほど大きなものではありません。低気圧に覆われたからといって、関節のような硬い所が膨らんだり縮んだりするのは考えにくい。ですので、気圧の変化を、体のどこかにある特別なセンサーが感じ取ることで、体調の変化が現れるのではないかと考え、学生たちと一緒にさまざまな実験を繰り返し探りました。
そして、耳の奥にある「内耳」という部分に気圧を感じる場所があり、それが気圧の変化を感じると神経を介して脳に伝わる、ということがわかった。「これから天気が崩れるよ」「台風が来るよ」という情報が内耳から伝わるので、脳は「大変だ。体全体にアラートを出さなきゃいけない」と判断し、自律神経がバタバタと暴れてしまう。それが体調不良の原因だと僕は思っているんです。