渡辺 どんな人がなりやすいんですか?
佐藤 もともと持病を持っている人が気づきやすいだけで、本当は、みんな同じように影響を受けているし、そういうメカニズムはみんな持っているだろうと考えています。
ただ、天気の変化を感じ取る場所は耳だけではなく、体の端っこの所や血管、皮膚にもなんらかのセンサーがある可能性は否定できません。まだわかっていないことが多いので、それについての実験もこれから始めるところです。
松本 私は天気が大きく荒れる前に痛みが出るんです。爆弾低気圧という言葉をよく耳にするようになった10年ほど前、奥歯がものすごく痛くなったんです。3日ほどずっと痛くて、そのうち、耳の奥まで痛くなってきて。「歯医者に行った方がいいかな」と思っていたら、天気予報で「爆弾低気圧が発生しました」と。その後、低気圧が来たら、ケロッと良くなったんです。
台風のときも同じ。「台風が発生しました」というニュースを聞くと、だんだん嫌な感じがしてくるんですが、来ちゃうと全然平気。
野宮・渡辺 ええ~!
松本 大雨もそう。降ってしまったら快調(笑)。その前までは、なんかちょっとだるかったり、朝から重くて、頭に水が入ったかと思うほど顔がむくんでしまったり。でも、雨が降ってしまうとスッキリ。
佐藤 わかります。僕が診ている患者さんでもそういう人はいらっしゃいます。熱帯低気圧がはるか南にあるときに調子がグーンと悪くなり、それが日本にやってくると、「あ、もう大丈夫」と。人によっては「曇りのときが一番嫌。早く雨が降ってほしい」と。
松本 そうなんですよ~。
佐藤 例えば、邪馬台国を治めていたとされる女王・卑弥呼っていますよね。人々から崇められ求心力を持つに至った理由のひとつに、「雨乞いの能力があった」と言われていますが、あながち作り話ではないと思うんです。
実は僕は、天気が崩れる前に何か別のことが体に起こっているんじゃないかと、そのことがすごく気になり、天気痛の症状がある方々に35回にわたってアンケートを取り、「どういうタイミングで調子が悪くなるのか」を統計的に調べてみたんです。すると、おっしゃる通り、雨が降り出す1日前~3日前に調子が悪くなるという人がすごく多かった。
もっと調べていくと、小さな気圧の揺れ、「微気圧変動」と僕たちは呼んでいますが、それがさざ波のように日本にやってくるのを感じ取っているらしいとわかり、そのセンサーはどうやら耳の奥の内耳にありそうだと。それが僕の考え方なんです。