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「一宿一飯の恩義は忘れません…」高倉健のような“渡世犬”が旅をする漫画が今、話題に

『少年と犬』の漫画家、村上たかしインタビュー

2022/06/28

source : 文春コミック

genre : エンタメ, 読書, 歴史

 

 25万部突破の直木賞ベストセラーを、『星守る犬』の名手がコミカライズ――。話題のコミック版『少年と犬』(原作・馳星周 漫画・村上たかし)が6月28日、発売になりました。

 傷つき悩む人々に寄り添う、一匹の犬の物語。コミカライズにあたっての意気込みや苦心した点、コミック版ならではの読み所について、漫画家の村上たかしさんにお聞きしました。

他の漫画家には絶対、渡したくなかった

――馳星周さんの原作を初めて読んだ時の印象について、お聞かせください。

村上 直木賞を受賞された時に本を買って読んでいて、主人公である”多聞“(たもん)のファンだったんです。強さ、優しさ、切なさがあって……だから、コミカライズの話があった時はありがたかったですね。自分にできるか、できないかはともかく、他の人には絶対に渡したくない、と思いました。

――多聞を漫画で描く際に、心掛けた点はありますか?

村上 原作では、シェパードに和犬の血が混じっているという設定なんです。ただ、それだとかなり黒っぽい犬なんですね。漫画にすると、黒だと表情がわかりづらい。ですから、少し薄めに変更させていただきました(笑)。とはいえ、たんに可愛らしくするのではなく、精悍さを出すように心掛けました。なにしろ、日本中を旅して、サバイバルしていくタフな犬ですから。

 

――多聞のキャラクターはどのようにして作られましたか?

村上 とにかく、彼は喋らない。背中で語るタイプなんです。旅する先々でいろんな人と出会うんですが、ちゃんとお礼をしてから去っていく。一宿一飯の恩義を重んじる、高倉健のような渡世犬なんです(笑)。そこは意識しました。

――多聞が旅先で出会う、無職の男、泥棒、風俗嬢、猟師などさまざまな人々が漫画には登場します。

村上 普通は主人公がひとりなので、その人物を掘り下げればいいんですが、『少年と犬』の場合、毎回、登場人物が替わる。ですから、キャラの描き分けが大変でした。5冊分くらいの人物を造形しましたね。しかも、登場するページ数が限られているので、ぱっと見て、誰だかすぐに分かるように描き分けないといけない。そこは苦労しました。

 特に女性は難しかったですね。僕自身、あまり女性キャラの持ち合わせがないので……。逆に、老猟師なんかはうまく描けたんじゃないかと思います。

 
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