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ヤクザとの関係「カタギの方がよっぽどこわい」

――ヤクザとの付き合いに危険は伴わないのでしょうか。

廣末氏 カタギの方がよっぽどこわいですよ。ヤクザは掟があり、私がそれを破らない限りは怖い思いもしたことはない。大変といえば、結婚した、子どもが生まれたなどなど、お祝いごとが大変ですが(笑)。

――では今後もアウトローに寄り添っていくと。

廣末氏 更生しようとする人に対して、日本社会は必要以上に厳しい。社会が更生を後押ししていないから居場所がない。だから再犯率が高いという現状を訴え、政策に資する提案をしていきたいですね。自分がこんな青春時代を過ごしたので、例えば振り込め詐欺の受け子を1回して逮捕されただけで、銀行口座も持てなくなるようなワンアウトで試合終了の社会はいかがなものか、と問題意識を持つに至ったんだと思います。

 私論ですが、現職ヤクザですら、間接税は払っているんです。納税をしている日本国民なのに、憲法が保障する人権を享受できていないのではないか。せめて辞めた人間でちゃんと更生しようとしている人の芽をつまないでほしい。新たな被害者を生まないための社会的包摂――これが安心・安全な社会をつくるために不可欠な要件だと考えています。

――反社会勢力への厳しい対策で、更生の機会を逸している可能性があるとみているんですね。

廣末氏 日本のヤクザ政策は極端なんです。みかじめだって、払う意思がない人から恐喝をすれば犯罪ですが、そうでなく安心のために自ら払っていた人もいた。なんならみかじめ以上にその店で金を使うヤクザだって多い。そういった個別の例には目を向けず、ひとくくりの政策を繰り返してきた。

 はい、もう炎上しますね(笑)。

 でもいいたいことは、そういった擁護ではなく、更生のできる社会作りです。法務省などの官僚はアンダーグラウンドの政策を、数字や伝聞という二次データでやっているのではないか。お役人は現場を知りませんから、実態を多面的に理解できない。自分は永田町にもいましたし、両方の現場を知っている人間として声をあげていく必要があると考えています。

――貴重なお話をありがとうございました。ヤクザ博士というキャッチフレーズや経歴から荒々しい方を想像していましたが、想像と少し違いました(笑)。

廣末氏 気がつけばヤクザ博士なんて言われるようになった自分ですが、ひとつ学者っぽいことを言わせていただければ、社会学にはシカゴ学派というものがあります。特徴は、自ら現場に入ることでズボンの尻を汚し、対象者と継続的な関係を築いて長いスパンで調査をすること。残念ながら、ヤクザ研究にはこういう人間が私以外にはいない。

 新聞記者の方で同じように問題意識を持って記事を書いてくれる人もいますが、多くはワンショット的。マスコミも研究者もそうなんです。だから私がやる活動には少しくらいの価値はあるんじゃないかと思っています。本当は後継者も育てていかないといけないんですがね。ゼミを持てないから厳しいかな。

 

 廣末氏は現在、障がい者施設で昼夜勤務をしながら、更生支援や地域社会における反社集団からの離脱支援などについて全国各地で講演する日々を送っているという。

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