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 しかし、2016年には出版社主催の公募小説新人賞とウェブ小説書籍化の比較がされ、後者の勢いが語られていたのに対して2019年にはウェブ発の書籍に対する語りがトーンダウンしていた。

 なぜそうなったのか。2010年代後半になると「ウェブ小説の書籍化が当たり前になって期待値が下がったから」だけでなく、市場規模の推移から見てもそう言わざるをえない状況になっていた。

 ウェブ発のライトノベル書籍(文庫は含まず、単行本のみ)の推定発行金額は2013年が約30億円、2014年が約50億円、2015年が約82億円、2016年が約100億円、2017年が約105億円、2018年が約108億円、2019年が約107億円、2020年が約102億円と推移している(*3)。つまり2017年でピークに達し、以降は漸減傾向になっていた。

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*3 「出版月報」2021年9月号、5頁

 

 つまり「ウェブ小説書籍化市場」という観点からはさらなる成長のために、「文芸市場」としては落ち込みに歯止めをかけるために、もはや2010年代半ばまでの「ウェブ小説書籍化」では足らなくなっていた――次なる起爆剤が必要なフェーズに突入していた。

 まずはラノベ界隈から、2010年代後半以降の鉱脈探究を見ていこう。

 ウェブ発ラノベ単行本と文庫ライトノベルの市場と合算したライトノベル市場で見ても2016年の302億円がピークであり、ラノベ市場の成長は2010年代半ばに止まっていた(ただし単行本は「推定発行金額」、文庫は「推定販売金額」であり、本来は単純に合算すべきものではない。また、これらの数字には電子書籍の売上が含まれていない)。

 なろう系書籍化レーベルとして2019年にはKADOKAWA電撃の新文芸、宙出版ヒストリアノベルズ、富士見書房ドラゴンノベルス、徳間書店アークライトノベルスが創刊され、『はめふら』(『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』)がTVアニメ化されて大ブレイクした2020年には女性向けのオーバーラップノベルスf、双葉社Mノベルスfが創刊、2021年にはマイクロマガジンGCN文庫、POD(プリントオンデマンド)で絶版がないことを謳ったインプレスR&Dいずみノベルズが創刊された。

 だがなろう系書籍化だけでは、もはや成長は見込めない。次に当たるのはどこか。動きは多様化していく。

多様化していく投稿サイト

 2019年7月にはホビージャパンがラノベ系の小説投稿サイト「ノベルアップ+」を正式オープン。投稿作品を募り、各種コンテストを開催して書籍化するだけでなく、HJ文庫やHJノベルス作品の試し読みやスピンオフも公開されている。作品の販売機能は今のところ存在しないが、読者が有料のノベラポイントを購入し、作品や作家を「応援」することで作家は「貢献ポイント」を獲得でき、貢献ポイントは換金できる。イメージキャラクターの「のべらちゃんさん」がTwitter上で積極的に発信・交流し、サービスに関するデータを積極的に公開している点と、読者が有料で購入したイラスト付きのスタンプを感想として贈る(書き込む)ことができるなど、読者から作品へのアクションを強く促している点が特徴的だ。

 投稿作品数の伸びはサービス開始以来右肩上がりであり、書き手も読み手も集まってきている。今後マンガ化、アニメ化作品が複数育っていけば、なろう、アルファポリス、カクヨムに続き、ラノベ系投稿サイトとしての地位を固めるだろう。