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投げ銭の金額に比べたコスパの悪さ

 YouTubeアカウントの登録者数が309万人を超えるも2022年2月に引退したキズナアイを筆頭に、人気VTuberの所属する事務所(プロダクション)も複数ある。

 その中でもホロライブ所属のVTuberたちが登場する小説が、カバー株式会社(原著、企画・原案)、兎月竜之介(著)『ときのそら バーチャルアイドルだけど応援してくれますか?』として、また、.LIVE所属者たちが登場する小説が.LIVE(原著、企画・原案)、姫ノ木あく(著)『電脳少女シロとアイドル部の清楚な日常 目指せ学園祭大成功!』として刊行された。2010年代前半にボカロ小説が成功したことからの連想だと思われる。

 ただ、ボカロはボーカロイド自体には物語も人格も存在せず、小説家が自由に創作できたのに対し、VTuberは人間が演じるタレントのようなもので、トークやライブには向いていても物語には向いていなかった(お笑い芸人やバラエティタレントを主人公にした小説が「泣ける自伝」以外はあまり売れないのと事情は似ている)。

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 また、動画生配信中にVTuberがファンから受け取る投げ銭の金額に比べれば、ノベライズ印税は些少であり、VTuber事業者サイドの監修の手間からするとコストパフォーマンスが悪かったことも、この試みが続かなかった理由だろう。

©iStock.com

 ただ2021年刊行の七斗七『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』(富士見ファンタジア文庫。ウェブ小説投稿サイト「ハーメルン」と「カクヨム」に投稿されたものを書籍化)などVTuberを題材にしたラノベはジャンルとして定着してヒット作も出たほか、やはり2021年刊の燦々SUN『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(角川スニーカー文庫)のヒロイン・アーリャがVTuber化するといった展開は見られた。

 2020年にはYouTubeのマンガ動画/YouTubeアニメ発の小説も登場している。

 2020年12月25日刊行の天乃聖樹・著、もすこんぶ(イラスト、企画・原案)『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。』(MF文庫J)が初のノベライズ作品である。また、同年12月28日には三河ごーすと著、原作フェルミ研究所の『人類滅亡して最後の1人になったら?』(KADOKAWA)、2021年1月25日には三河ごーすと『義妹生活』(MF文庫J)も刊行されるなど、相次いだ。