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「ポップスは常に自由でなくちゃいけません」…日米の権力者たちを批判する“唯一無二のミュージシャン”桑田佳祐の根本思想

『桑田佳祐論』 #2

2022/07/02
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 それからのこと。まずは2014年12月28日、横浜アリーナで行われたサザンのコンサートを安倍元首相が鑑賞。

グレーのタートルネックに薄い青色のジャケット姿の首相は、くつろいだ様子でコンサートを楽しんだ。「爆笑アイランド」という曲で、ボーカルの桑田佳祐さんが「衆院解散なんてむちゃを言う」と、歌詞にはない一節を歌う場面もあった。首相は曲に合わせて手を振ったり、身を乗り出して拍手を送ったりするなど満足げだった。(『産経ニュース』2014年12月28日)

 3日後の大晦日、サザンは同じく横浜アリーナから、NHK『紅白歌合戦』に生中継で参加し、《ピースとハイライト》を歌ったのだが、それが炎上。謝罪に追い込まれる。

桑田さんは2014年11月、秋の紫綬褒章を受賞(ママ)したが、12月31日に横浜アリーナで行われた年越しライブ「ひつじだよ!全員集合!」のステージ上で、ス(ママ)ボンのポケットから無造作に褒章のメダルを取り出してオークションにかけるような発言を行った。また、NHK紅白歌合戦では「ちょび髭」をつけ、「ピースとハイライト」を演奏したことが、一部で政治的な批判ではないかと話題になった。(『ハフィントン・ポスト』2015年1月15日)

桑田佳祐「常に自由でなくちゃいけません」

 そして『文藝春秋』(2018年10月号)で、桑田佳祐はこう語っている。

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決して何かが解決したわけじゃないのに、なんとなくタブーみたいにして、そっと触らず済ませてしまおうということって多いように思います。それで、ちゃんと見つめてこなかったツケが、東日本大震災のときにまた噴き出してきた気もする。

 

歌を通してうまく風刺できたらいい。大衆とともにあるポップスというものは、本来それくらい突っ込んだ表現をしなければつまらないものだし、きつい風刺をさらりとできるくらい、常に自由でなくちゃいけません。

「常に自由でなくちゃいけません」──戦後民主主義の本質。理想と現実、楽観と諦観を併せ呑みながら、これからも私たちは、桑田佳祐を聴き続ける。

桑田佳祐論 (新潮新書)

スージー鈴木

新潮社

2022年6月17日 発売

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

「ポップスは常に自由でなくちゃいけません」…日米の権力者たちを批判する“唯一無二のミュージシャン”桑田佳祐の根本思想

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