衰えるに任せておけばどんどん衰退するが……
もちろん、トレーニング(運動)を継続していたことや、エベレスト登頂の目標を見失わなかったことも、三浦さんの元気の秘訣だったことは間違いありません。
年を取ると、筋力や臓器だけでなく、脳も老化します。認知症はそうした老化現象の1つです。なかでも一番多いのはアルツハイマー型で、「脳が縮む」と言われているタイプです。
実際に脳を解剖すると、海馬や前頭葉に萎縮が見られます。海馬は記憶を司つかさどる部分、前頭葉は思考や感情、行動や判断を司る部分です。人間が人間らしく生きるために、最も必要な部分が前頭葉なのです。
前頭葉の働きが衰えると、日常生活では次のような変化が生じてきます。
たとえば、考えることが面倒になる、感情をうまくコントロールできなくなる、
喜怒哀楽が激しくなる、意欲が衰える、集中できなくなる、などです。
人間の体はよくできており、使わない機能は退化していきますが(廃用性萎縮と言います)、使えば活性化していきます。とくに脳はその傾向が顕著です。
つまり、衰えるに任せておけばどんどん衰退しますが、奮起して使えば活性化させることができるわけです。
そして、最も効果があるのが「したいことをする」ということです。前頭葉にとって、それはとても刺激的なことで、脳が活性化するのです。
楽しいこと、面白そうだと思うことほど、脳にとっては刺激的です。反対に、つまらないことや、我慢を強いると、脳の働きは鈍ります。
我慢をして毎日をつまらなく生き、脳を萎しぼませていくか、したいことをして毎日を元気ハツラツと生き、脳を活性化させていくか――。
したいことをすることは、脳の老化を防ぐためにも必要なのです。