文春オンライン

落ち始めたら底なしの世界…知られざる“闇カジノ”と「負けた客」の行方

2022/06/27

genre : ニュース, 社会

note

 じつは、キャバクラなどの飲み屋から客を引くのが、いちばんリスクが低いとされている。キャバクラで散財する客は半グレか、もの凄いお金を持っている表の人間の2種類。キャバ嬢は客の懐具合も含めて情報を相当引き出しているからだ。闇カジノ側としては高坂のような身元がしっかりしていて金を持っている“表の人間”というのは恰好のカモとなるのだ。

 闇カジノにおけるメインゲームとなっているのが「バカラ」である。バカラは人気ギャンブルであると同時に、一夜にして巨万の富を得ることもあれば、あっという間に数億円もスッてしまう危険なギャンブルとしても知られている。

バカラのルールはシンプルゆえに…

 高坂のその後を見てみよう。

ADVERTISEMENT

 都内某所の闇カジノ――。

 鉄の防火扉の向こう側は、煌びやかな世界が広がっている。高級家具に豪華な内装、客が嗜む酒や高級料理は全て無料だ。給仕をする店員は美人揃い。客は居心地のよい空間で、熱気に包まれたバカラテーブルに向かう。

 バカラのルールは、丁半博打にも似て実にシンプルだ。

「BANKER(バンカー)」と「PLAYER(プレーヤー)」という架空の二人の人物に対して、客は第三者としてどちらが勝つかを予想し賭けるというゲームである。ディーラーが配る2~3枚のカードの合計の下一桁が9を超えない範囲で9に近いほうが勝ちというルールで行われる。

 ディーラーがスマートな手つきでシューターからカードを配る。シューターとはカジノ専用のカードケースのことで、長方形のケースには数セットのトランプが収納されている。ディーラーはシューターの取り出し口からカードを取り出しテーブルに配るのだ。

 ディーラーにめくられるカードを注視する客たち。クラブXの上客だった高坂も熱い眼差しでカードを凝視していた。高坂は、お気に入りのキャバ嬢に誘われてキャバクラの支配人とともに闇カジノ店で遊び、どっぷりとはまるようになっていた。

負け始めたら底なしの世界

 最初は大勝していた高坂は、ゲームが進むほどに負けが込むようになっていた。その目は血走っている。

 高坂は大量のチップをBANKERにベットした。一発逆転の大勝負だ。

 闇カジノの別室には、モニターを監視している男がいた。男は手元のコントローラのスイッチを押した。

 勝負のその刹那――、シューターの中のカードが静かに入れ替わった。イカサマをかけられたのだ。