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 原理的に、2番目以降のものは、必ず1番目のものに対する相対性を持たざるをえない。準拠点との比較によって、相対的特徴=キャラクターを持たざるをえない。つまり2番目以降は、1番目がポスト・キャラクターという特権的な位置を占めているのに対して、通常の意味でのキャラクター性を持たざるをえないというわけです。

 

 

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注1 アニメ『けものフレンズ』のキャラクター。同アニメの主題歌「ようこそジャパリパークへ」の歌詞に「姿かたち」という言葉が使われている。

注2 『けものフレンズ』(2017~)総監督・コンセプトデザイン:吉崎観音、監督:たつき、制作:けものフレンズプロジェクトA(KFPA)。テレビ東京系列にて2017年放映。

注3 あくまで「多くは」。現代日本人の中にもアニメキャラに人格を見いだせない人も一定数いる。そのリテラシーの有無は優劣ではないし、多数派が自明視し透明化するルールを共有しないことでなにかが見えるということは往々にしてある。

注4 ここであのメタメタしいクソアニメ『ポプテピピック』(2018)を連想した読者もいるかもしれない。同作の「再放送」は、キャラクターの一貫性を意図的に揺るがしている。それが「面白い」ことはここで言う一貫性の存在をむしろ証明する。一般に、多くのメタ表現は、それが相手どる表現の前提と相互依存的である。

注5 「エンコード encode」は符号化、「デコード decode」は復号と訳される。

注6 「拡張現実 augmented reality」のこと。

注7 夏目漱石『坊ちゃん』

注8 大塚英志(1958~)編集者、批評家、漫画原作者。国際日本文化センター研究部教授。柳田國男の孫弟子に当たり民俗学の知見に基づく講論も行う。漫画原作に『多重人格探偵サイコ』、著書に『江藤淳と少女フェミニズム的戦後』など。二次創作文化の構造に搾取とネオリベラリズム性を見出す指摘は鋭い。

注9 大塚英志『キャラクター小説の作り方』(講談社現代新書、2003年)

注10 著者の編著『ポップ・ザ・初音ミク☆』(宝島社、2011年)でもそう語っている。

注11 間違いのないよう全文引用する。「クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が開発した、歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「ソフトウェア」です。大勢のクリエイターが「初音ミク」で音楽を作り、インターネット上に投稿したことで一躍ムーブメントとなりました。「キャラクター」としても注目を集め、今ではバーチャル・シンガーとしてグッズ展開やライブを行うなど多方面で活躍するようになり、人気は世界に拡がっています。

 年齢:16歳、身長:158cm、体重:42kg、イメージカラー:ブルーグリーン、ソフトウェアの声の担当:藤田咲(声優)」

注12 二次創作、UGC(User Generated Contents)

 原作作品を一時創作作品として、それを翻案、再構築するなどしてファンによって作られるものが二次創作。たとえば原作漫画のキャラと世界設定を借りた別ストーリーのマンガなど。N次創作が次のN+1創作を惹起し文化が広がった、という物語は初期ボカロ文化の説明としてよく用いられる。ただし音楽カルチャーとしてのボカロの現在の広がりをN次創作(創作の連鎖)と呼んで一様化するのはあまりに実態とそぐわない。多くのボカロ曲は「一次創作」として作られている。

 UGCは「(写真映えを理由に)SNSで消費者が自主的にアップした写真」などマーケティングに資する消費者行動を包含する用語。

注13 声についてもたくさんのパラメーターによって実はかなり可変幅が広い。

注14 初音ミクProject DIVA いまやゲームセンターの筐体音楽ゲームでは一大シェアを誇り、スマホ音ゲー「プロジェクトセカイ」を成功させたセガの最初の音楽ゲームはこれだった。その後の「maimai」「CHUNITHM」「オンゲキ」などの機種でもボカロ曲との蜜月は続いている。

注15 北海道札幌市で冬期に開催される「SNOW MIKU」と連動したミクの公式バリエーションのひとつ。髪色のみならず衣装などビジュアル全体が水色のトーンで描かれる。

注16 神道 Shintoism 日本において自然発生的に成立した土着宗教。明らかな開祖は存在せず、多神教的で、自然崇拝的。明治から終戦までのあいだ、実質上国教化されるなど(国家神道)、大きく政治利用された歴史的経緯には注意。天皇の祖先とされる天照大御神が最高神格を持つとされたのも明治時代に入ってからのこと。

注17 伊勢神宮の霊がもっとも真正であるなど、ヒエラルキーを想定する議論もあるようだが、非専門家なのでさておく。なお天照大御神のジェンダーは不明。女神とみなされることが多いが、古典の記述を男女二分法に当てはめる必要はない。

注18 「ちびレンbot」の定期ツイートより。

注19 文学史の中にも先行例はあって、稲垣足穂『一千一秒物語』には次のような有名なフレーズがある。「ある夕方 お月様がポケットの中へ自分を入れて歩いていた」稲垣足穂『一千一秒物語』(新潮文庫、1969年)20ページ。

注20 ネットの情報が最新なので、そちらを参照されたい。現愛は入手不可能になってしまったものも少なくない。

東京大学「ボーカロイド音楽論」講義

鮎川 ぱて

文藝春秋

2022年7月13日 発売