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〈写真多数〉「村民がゾンビに扮するのはどうかなぁ」…観光客を倍増させた「人口700人の村」の奇跡

『700人の村がひとつのホテルに』 #3

2022/07/06

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 娯楽

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村民がゾンビに!

4:村民がゾンビに!「ゾンビ村 KOSUGE」

「小菅村のことを全く知らない人に、興味をもってもらうにはどうしたらいいんだろう」

 ある日、村づくりに取り組む村民有志が集まる会で、さとゆめの社員がこんな問いを投げかけた。

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「村を舞台に村民がゾンビに扮するのはどうかなぁ……」

 そんなアイデアが村民から出され、参加者が盛り上がって始まったのが、その後メディアを賑わせることになる「ゾンビ村 KOSUGE」企画だ。

 2017年11月に開催された「第20回山梨県小菅村 大地の恵みまつり」で、村人がゾンビに扮して「小菅の湯」とその周辺で1日限定のお化け屋敷を開催したのだ。

 どうせやるなら、冗談半分ではなく、本気でホラー好きを唸らせるくらいのものにしたいということで、4歳の幼稚園児から83歳のおばあちゃんまで、大手遊園地などでお化け屋敷の企画制作を手掛ける会社に映画のような本格的なゾンビメイクを施してもらい、小菅の湯に来た人たちを出迎えた、というか怖がらせた。

ゾンビに扮した小菅村の人たち(画像:嶋田 俊平氏提供)

 当日はゾンビ村を目当てに、例年の2倍となるおよそ3000人が来場し、アメリカやイギリス、インドの海外メディア、在京キー局など多くのメディア取材が入り大盛況となった。

 このゾンビ企画での成果は、なによりも村民全体を巻き込んでのイベントにできたということだった。村の人たちが面白がりながら参加してくれたことで、小菅村の和やかな雰囲気も伝わったはずだ。村の人たちに呼びかけると、最初は「なんでゾンビ?」と不思議がられたが、それでも小菅村のことを知ってもらえるなら、と多くの方が喜んで協力してくれた。

 ポイントカード、メディア、メニュー・商品開発などは、小菅村をもともと知っている人や、観光客・行楽客をターゲットに、長い時間をかけて認知・購買・利用を増やしていく地道な施策だが、誰もが思いもしなかった「ゾンビ村 KOSUGE」のような斬新な試みで好奇心を刺激して、村に注目してもらうこともできる。そのための入口はなんだっていいのだ。