「地方創生」の成功モデルとして全国から注目される「山梨県小菅村」が村民を増やすために実施した数々の施策を紹介。

 コンサルティング会社「さとゆめ」の代表・嶋田俊平氏がプロデュース、国内外の多くのメディアにも注目された「ゾンビ村 KOSUGE」とは? 同氏の新刊『700人の村がひとつのホテルに』より一部抜粋してお届けする。(全4回の3回目/4回目に続く)

嶋田氏が地方創生を支援する小菅村の大自然 ©袴田 和彦

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村民を増やすための努力

 会社を設立し、3つの施設を一体化して運営することで、効率的なPRやサービスの向上を図ることができ、その効果は徐々に出てきた。

 ファミリー層が増え、売上は毎年右肩あがりで、2020年度には「小菅の湯」も黒字に転じ、自走化のめどがついた。「道の駅こすげ」の駐車場は、平日でも7〜8割は埋まり、週末には近くの村営運動場などを臨時駐車場にしないと間に合わないほどの賑わいになった。

 その勢いに任せて、私たちはこの「株式会社源」を核に、村役場、住民、事業者とともに分数村民を増やすための様々な施策をさらに進めていった。いくつか主だったものを紹介しよう。

1:小菅村総合情報サイト「こ、こすげぇー」

 何度も村に足を運んでくれるリピーター的な観光客(3分の1村民)を増やすためには、季節折々の観光情報や商品情報を地道に発信する必要がある。村外から地域活動に参加してくれたり、ふるさと納税をしてくれたりと、村づくりに参加・協力してくれる人(2分の1村民)にも、村の様々な活動情報、イベント情報を発信する必要がある。また、本気で移住を考え始めてくれた人は、村の住宅事情、買い物、教育、子育て環境など生活に根差した地域の情報が知りたいだろう。

 当時、村には役場や観光協会のWebサイトはあったものの、更新頻度も低く、それぞれの立場からの情報に限定されていて、とても小菅村の魅力を伝えきれているとは思えなかった。

 そこで、新たに情報発信メディアをつくることにした。

 一見、「何もない」村に見えて、「ここすげぇー」所なんですよ、との思いをこめて、「小菅村を楽しむ総合情報サイト『こ、こすげぇー』」と名づけた。

 メディア立ち上げにあたって、特にこだわったのは、誰が記事を執筆・編集・発信するのかということだ。現在、全国各地では数えきれないくらいの地域系メディアがつくられている。だが、補助金が出るうちはプロのライターやカメラマンに頼んで、整った写真と文章で更新されるが、補助金が終わると、ぱたりと止まってしまうことも多い。「こ、こすげぇー」は補助金のあるなしにかかわらず、常に更新され、旬の情報を発信し続ける動的なメディアにしたかった。

 そのためには、村外のプロに頼むのではなく、村民が自ら記事を執筆・編集・発信できるようにならないといけない。とはいえ、村のなかにそんなスキルを持った人がいるわけではないので、まずは「村民ライター希望者」を募集し、記事の書き方や写真撮影の基礎を学ぶ村民向けの「ライティング講座」や「写真撮影講座」を開催した。