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〈写真多数〉「村民がゾンビに扮するのはどうかなぁ」…観光客を倍増させた「人口700人の村」の奇跡

『700人の村がひとつのホテルに』 #3

2022/07/06

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 娯楽

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 そこには村で生まれ育った林業家、家族で移住してきた主婦、地域おこし協力隊の若者など、多彩な顔触れの10名ほどの志望者が集まってくれた。彼らに共通するのは、自分たちが大好きな小菅村をもっと多くの人に知ってもらいたいという熱意だった。

「こ、こすげぇー」が開設されてから3年ほどになるが、株式会社源の社員や村民ライターの地道な努力の結果、今では年間80万PVほどのメディアに育ってきている。

 記事の一例を挙げると、「林道! 国道! 峠! バイクで楽しい、小菅村ツーリングスポット紹介」「ヤマメの塩焼きを買ったら試したい、簡単アレンジレシピ」「夏は涼しい小菅村でキャンプ――玉川キャンプ村ってどんな所?」といった3分の1村民向けの観光・物 産情報から、「小菅村のふるさと納税について、担当者に聞いてみた」「2分の1村民との村づくり企画! 梅採りボランティアを実施しました」といった2分の1村民向けの活動情報など。

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 また、「小菅中学校ってどんなところ? 小菅村中学校の授業・部活・行事などの様子を聞いてみた」「田舎での新しい働き方! 小菅村のテレワーク実践者にインタビュー!」「田舎暮らしに興味のある女性必見! 小菅村で行われている『村コン』とは!?」といった村人の実情を当事者目線で発信するのがこのメディアの最大の特徴で、このサイトと併せ て、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSも活用し、リアルタイムの情報を随配信している。

 実際に「こ、こすげぇー」の記事を読んで、移住を決めた人もいる

さすがに選挙権は与えられないが…

2:仮想村民票「こすげ村人ポイントカード」

 実は、分数村民というコンセプトを思いついた時に、観光客や、研究で村に関わる学生、仕事で関わる社会人にも、できるだけ早い段階から村に愛着を持ってもらえるように小菅村の住民票を交付したり、村長選や議員選挙の選挙権や被選挙権を与えられないだろうかと夢想していた。だが、さすがにそれは地方自治法や選挙法などの法的なハードルがあり実現が難しかった。

 そこで、その代わりとして仮想村民票「こすげ村人ポイントカード」というカードシステムを構築することにした。

 これは、村との関わりを深めていきたいという意志を持った人に「2分の1村人」として登録してもらい、ふるさと納税情報、イベント情報、新商品情報、村づくり活動情報などをこまめに発信する試みだ。

 このカードを持っていると道の駅のレストランや物産館、小菅の湯などを利用するたびにポイントが貯まり、村内の施設が割引になったり、商品券をもらえたりする。また、村外の加盟店やネットショッピングでもポイントを貯めたり、使うことができる。

 このポイントカードの会員数は、2021年10月の時点で2500人ほどとなり、小菅村の人口の3倍を超えている。