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“かつ初め”するなら久が原「自然坊」湯島「ますだ」で揚げましておめでとうございます

genre : ライフ, グルメ

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 2017年もいよいよ終わり、忘年会の次に来るものと言えば新年会。分厚い肉を頬張りながらお酒を飲むのも乙なものだ。近年ではとんかつ飲み屋という業態をちらほら見かけるようになってきており、とんかつ定食にビールという定番だけではない、とんかつと一品料理でお酒を楽しめる店も増えてきているのだ。

閑静な住宅街にあるビブグルマンとんかつ屋

 東急池上線の久が原駅は、閑静な住宅街に小さいながらもいい店が集まる商店街がステキな地域だ。その商店街から少し入ったところに、ミシュランのビブグルマンにも選ばれている「とんかつ自然坊(じねんぼう)」がある。ビブグルマンとは、星はつかないながらも低価格で良質のグルメが楽しめるお店のことだ。

 店ができたのは27年前。今も初代の笹本伸爾(しんじ)さんが奥の揚げ場に立ち、カウンターでは二代目の彌(わたる)さんが一品料理を手際よく調理する。

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二代目の笹本彌さん

「このあたりは住宅街で近くに大きな会社があるわけでもないですから、都心のとんかつ屋さんのようにお勤めされている方のお昼の需要はあまりなく、むしろ昔から夜の方がお客さんがいらっしゃいますね。もちろんお昼から少しお酒を、という方のために、夜のメニューは昼も食べられるようにご用意してあります。ゆっくりお食事を楽しみに来てくださる方がほとんどなので、奥の座敷には中庭も作ってあるんですよ。「自然坊」という店の名前も、唐津焼の中川自然坊からとっていて、うちの器はこちらのものを使っているんです」

 たしかに店には、都心のとんかつ屋のような慌ただしい雰囲気はまったくない。器の美しさ、店内のスペースの使い方など、ゆったりとした時間を演出するような作りになっている。

ふろふき大根でまず一献

日本酒でオールドスクールなとんかつをサックリと

 メニューの品数は決して多くはないが、すべて味は確か。お酒も伊勢志摩サミットで各国首脳に振る舞われた「作(ざく)」や、「田酒」などが揃っている。

 とんかつは昔ながらのとんかつ屋さんのそれだ。脂は強すぎず、ブリっとした噛みごたえがなんともうれしい。衣も軽めで、口当たりはあくまでやさしい。オールドスクールで上質なとんかつが楽しめる。

ロースかつ単品2100円

 そしてもう一つ、特筆すべきはこの串あげ。ヒレカツにするときに切り落とした部分を使ったものだが、玉ねぎも一緒に挟んで揚げてあるのだ。火の入った玉ねぎの甘味が、質のいいヒレ肉に完璧にマッチしている。お酒のアテにつまむのにも最適なボリュームで、これはちょっとした一品だ。

 

 少人数でゆっくりととんかつとお酒を楽しむなら、最高の店のひとつと言っても間違いない。新年かつ始めはいつもと違った雰囲気で、というのにも良さそうだ。