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「俺ってすごい」とアピールせずにいられない…“マウンティングしたがる”男たちの生々しい欲求の正体とは

『無恥の恥』より#1

2022/07/08

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, ライフスタイル, 娯楽, 芸能, 社会, メディア

note

 出世するのも大変でしょうが、上手に出世しないでいるのもまた難しいのだなぁと、私は思ったことでした。全く出世しなくとも、楽しそうに淡々と、そして周囲から愛されつつ組織の中で生きている人はいます。彼等の場合、本当に出世には興味が無さそう。「出世をしないことへの言い訳」などもしないので、安心して見ていられるのだと思う。

 その飲み会では最後、最も出世している人が、全員分を奢(おご)ってくれました(たぶん経費)。

「えっ、仕事じゃなくてプライベートの会なんだから、割り勘でいいんじゃないの?」

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 と私は思ったのですが、他の男性達は平然と奢られています。割り勘を主張しづらいムードがあったので、私も何となく奢られたのですが、釈然としない気持ちが残りました。

 が、後から湧き上がってきたのは、「ああ、あれが『マウンティング』というものなのかも」という気持ち。女性の世界では、しばしば「私の方があなたより上よ!」という優位性アピール、すなわちマウンティングが行われると言われますが、それは男性の世界でも同じ、というよりも、それはそもそも男性の方が得意な行為です。出世した男性は、「奢る」ことによって、優位性アピールにとどめを刺したのでしょう。

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「俺の凄さ」自慢

 昔から男性の世界では、女性の世界よりもずっとあらわに優位性が可視化されていました。どれほどの社会的地位を得たか、どれほどのお金を儲けたかという、ぱっと見てわかる評価軸が、彼等の世界には存在しているのです。そして、お金をたくさん儲けたりすると、美しい妻などの素敵なオマケも、ついてくる。

 対して女性の世界では、それらの評価軸が今一つ見えにくい時代が続きました。カオの美醜やモテ具合、夫の地位や経済力、自身の地位や経済力、子供の偏差値……等、細かい物差しがたくさんあるために、複雑なテクニックを使用して「私の方が上」というちまちましたアピールをしてきたのではないか。

 久しぶりに男の世界を見て、彼等の「俺の方が上」と知らしめたいという気持ちは、今も昔もさほど変わってはいないのだなぁ、と思った私。IT化だのグローバル化だの草食化だの、様々な変化が男の世界に訪れていても、「上に行きたい」「上であることを自慢したい」という欲求は、そう簡単に消えるものではないらしい。