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「『ロシアの妖精』というエロ本を買っていた」

 Xさんが続ける。

「『殺すつもりだった』と言っていても、本人にそんな度胸はないですよ。『世の中変えたい』とか言って女の話とか浮ついた話は一切しなかったけど、『ロシアの妖精』というエロ本を買っているのを見たんです。所詮、革命云々というのはカッコつけやと思います」

 しかし、「刑務所に戻りたい」といって再犯に手を染めるのでは本末転倒だ。なぜ長久保容疑者の更生はうまくいかなかったのだろうか。

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「俺らは刑務所内では、外に出たらどうするか、という考えのもと勉強します。でも長久保だけは、刑務所での生活を第一に考えていたんじゃないですかね。だって、受刑者のしもやけがひどいから薬を出すように刑務所の審査会みたいなところに直訴してくれたりもしたんですよ。そんな刑務所側からにらまれるようなこと、誰もしたくないじゃないですか」

川越警察署 ©文藝春秋

 ほかにも長久保容疑者は、外部のNPOを通して、刑務所内の古い本を子供に寄付したり、逆にキリスト教系のNPOから刑務所に本を寄贈してもらったりするなど、ほかの受刑者がしないようなこともしていたという。

「そういう積極的な姿勢もあって、ずっと模範囚でした。それで9年も務めれば100万円くらい報奨金が出ていてもおかしくないんですよ。赤バッジなら月2万円くらいはもらえたんちゃうかな。それが今回の逮捕時には所持金は数百円だったわけですよね。シャバに出てからの生活を考えたら、そんなことになりようないと思いますけど」

 積極的な更生への姿勢をみせる“エリート囚人”による再犯。刑務所での更生といった日本の司法制度が抱える問題を提起している事件のようだ。

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