「思ったよりつまらない人だったんですね」…富樫が心理的柔軟性を得るきっかけ
スカウト生としてエスペリオンユース(高校年代)に入団した冨樫ですが、昇格生との間では不穏な空気を漂わせています。理由は、小学生のときに練習参加をして、「プロになるため」にサッカーをしている彼らの視野の狭さに嫌悪感を抱いたから。
弱小サッカー部に所属しつつも、スカウトされるまでに自己流で磨いてきたプレーにも自負を持っています。常に自分で考えながら練習してきたので、教わったことをひたすら忠実にやっているだけに見える昇格生にも、また嫌悪感を抱いているようです。
寮で同室のアシトには心を開き、アシトの弱点である基本動作「止めて、蹴る」を指南する一面もあります。
しかし、アシトのほうが先にAチームでの試合の出場機会をつかみ、爪跡を残すプレーをした際のこと。スタンドから観戦していたベンチ外のメンバー(大友)がアシトの活躍を喜んでいるのに、浮かない表情の冨樫。
その冨樫に杏里がこう言います(14巻137話)。
杏里「なんでそんな顔をするんです? 思ったよりつまらない人だったんですね、冨樫選手」
冨樫「ハァ?」
杏里「納得できてないって感じですよ。青井選手が自分の先を行ってるのが」
冨樫「いきなり何絡んできてやがる、お嬢。別に、あいつが先行ってるなんて思っちゃいねーよ!」
杏里「あなたは青井選手から、何かを学ぼうとしたことはあるんですか?」
冨樫「言ってる意味がわかんねぇな。俺がアイツから何を学べってんだよ?」
杏里「その言葉からもわかります。あなたはきっと、青井選手を無意識に下に見てるんですよ」
このやりとりによって、心理的ガッチガチだった冨樫のなかに小さな引っかかりが生まれます。
監督の福田からもダメ出し
その後の練習シーン。アシトのプレーにダメ出しをする冨樫に、福田監督がこう言います。
「冨樫。今言ったことをなぜ事前に指示しない。『言わなくてもわかってるだろう』『俺の思う通り動いてくれるだろう』おまえのプレーには対話がない。余計なプライドが邪魔をしているんなら今すぐ何とかしろ。お前が今、一番Bに近いぞ」(14巻139話)
こうして、杏里からだけでなく福田からも凝り固まっていることを指摘された冨樫。その流れで福田は、冨樫やアシトを含む「Aチームのサブ組」に対してこう言います。