プロサッカークラブの育成部門(ユース)を舞台に描かれた人気サッカー漫画『アオアシ』(小学館)。同作では、自ら考えて動ける「思考力」がメインテーマになっており、サッカーやスポーツだけでなく、ビジネスにも通じる内容が散りばめられている。
ここでは、『アオアシ』のエピソードを事例にしながら、「思考力」について探求した仲山進也氏の著書『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方──カオスな環境に強い「頭のよさ」とは』から一部を抜粋。物事を習慣化させるまでのプロセスを紐解いて紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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「知る」と「わかる」の違い
「知る」と「わかる」の間には、2つの壁があります。
「やってみないとわからない」という「行動の壁」と、「仮説がないと気づけない」という「気づきの壁」です。
アシトは望コーチから、基本中の基本「止めて、蹴る」ができていないと指摘され、1人でもできる練習方法を聞き出します。そして、延々と練習し続けます。
この「やってみる」姿勢は、アシトの強みの1つです。多くの人は、さまざまな「やらない理由」や「できない理由」をつけて、「知っているけどやってない」「やってもいないでわかったつもり」の状況に陥りやすいからです。この「行動の壁」に道を阻まれている人が本当に多い。
特に、ベテランになってくるほど、行動の壁が高くなる傾向があります。さまざまな経験を積んだり、人から話を聞いていると「リスクの視点」がどんどん増えてくるので、やってみる前に「うまくいかない理由」をたくさん思いついてしまうからです。
やってみないと、わからないのに。
そうやって行動しないままなのが、最大のリスクなのに。
まずは思考より試行。考えるために行動する人が、壁を突破します。
実際、アシトがガムシャラに自主練する姿を見かけたコーチやチームメイトたちは、その「やってみる」姿勢に刺激を受けます。
ただし、「止めて、蹴る」についての仮説がないまま繰り返しているうちは、なかなかブレイクスルーが起きません。これが「行動の壁」を越えたあと、「気づきの壁」に道を阻まれている状態です。