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――自分に合った椅子を選ぶと、子供たちの集中力は上がるんですか?

荒川校長 全然違いますね。バランスボールを使うようになって、椅子に座っている時よりもずっと集中が続くようになった子もいます。私はバランスボールが苦手なのでどうしてあれで集中できるんだろうと思いますが(笑)、本人にとってそれがベストなら、その環境を用意しようというのがあおば学級の考え方です。

バランスボールで授業を受けることを選んだ生徒も ©文藝春秋

森村先生 “自分で選んだ”という体験が大事なんですよね。今まで周りに合わせられず自信を失っていた子が、まずは自分で選ぶことからスタートする。だから、単純に道具を選んでいる以上の意味がある。一度選んでも合わなければ、また道具を変えて再挑戦すればいいんですから。

「大きな音がすると自分が攻撃されると思って暴力を振るっちゃう」

――ある意味“環境のせい”にすることで、「自分はダメなやつだ」と思わなくて済むんですね。

森村先生 そうですね。以前、頻繁に暴力を振るう子がいた時期に“防音部屋”を作ったこともあります。暴力が良くないのはその子もわかっているのですが、よくよく話を聞くと「大きな音がすると自分が攻撃されると思って暴力を振るっちゃう」と。それなら静かな部屋があれば落ち着けるかもしれないと相談して、暗くて静かな“防音部屋”を作りました。イライラした時はその部屋に自分で入るようになり、落ち着いたら出てきてまた授業に参加できるようになりました。

子供たちが相談して作った、落ち着くための防音部屋 狛江市立狛江第三小学校提供

荒川校長 暴力を振るうこともどんどん減って、他の子と笑顔で卒業式を迎えられました。子供たちが我慢して行動を変えるのではなく、環境を変えるだけで本当にいろいろなことが解決するんですよ。

――特別支援学級では通常学級と同じ教育課程のほかに、「自立活動」という特別プログラムもあると聞きました。

荒川校長 「自立活動」を一言で説明するのは難しいのですが、コミュニケーションの取り方や、自分の得意なことを伸ばす方法、苦手なことに対処する方法を身につける練習をしています。自分の状態を把握して、相手に正確に伝えることも含まれます。

「カレーが嫌いな人はそんな理由だったんだ」

――大人が聞いても、ぜひ小学校で習いたかったことばかりです。具体的にはどんなプログラムなんでしょう。

自立活動の1つ「気持ちコップ君」を説明する森村先生

森村先生 自立活動には、健康の保持や心理的な安定、人間関係の形成、環境の把握、身体の動き、コミュニケーションと6区分に分かれた内容があり、子供に合わせて活動の内容を決めていきます。例えば“気持ちコップ君”という活動があります。これは、自分の気持ちを言語化して友達とシェアする活動です。例えば「給食がカレーライスだった時の気持ち」というテーマだとしたら、嬉しいから悲しいまで5段階の表を作り、自分の気持ちに近いところにコップを置いてその理由を話し合います。「私はカレー好きだけど、カロリーが多くて太りそう」とか、逆に「カレーライスは味が混ざってて、ニンジンの味とジャガイモの味とバラバラに来るからやだ」「白飯は白飯で食べたい」という意見が出たり。

 そうやって気持ちをシェアすることで「カレーが嫌いな人はそんな理由だったんだ」「僕以外にも嫌いな人がいるんだ」って思えるようになるんです。