1ページ目から読む
3/5ページ目

Mr.マリックがサングラスをかけたワケ

――では、サングラスは世界一の催眠術師からの影響ですか。

マリック デンマークの飛行場で乗り継ぎ便を待っていた時に、ふいにサングラスが欲しくなって。そのフランス人の催眠術を見て、サングラスはミステリアスでいいなと。私たちの世代のヒーローだった、月光仮面、快傑ハリマオもサングラスをかけていたし。

 あと、サングラスをかけたマジシャンはいなかったんですよ。マジックは目線が大事ですから。人間は目で追う動物なので、観客は自然とマジシャンの視線を追いかけます。我々マジシャンは観客の視線を誘導している間に、いろいろなタネをうまく隠すことができる。

ADVERTISEMENT

トレードマークとなるサングラスをかけ始めた頃

 だから、目は隠しちゃいけないのが鉄則で、眼鏡はダメ、サングラスなんてもってのほか。そんな常識がマジック界で共有されていた時代に、世界一の催眠術師を見ちゃったもんだから。ミステリアスな雰囲気が出るならサングラスをかけようと。

 空港のサングラス屋で世界一の催眠術師がかけていたのと似たものを手に取ったけど、うろたえるくらい値段が高くて。でも、欲しいから買いましたよ。

カリスマ性を出すための演出術とは…

――マオカラーの衣装は。

マリック サングラスをかけると、マジシャンというよりも超能力者っぽくなっちゃう。で、今度は衣装も変えなきゃいけないなと考え出して。「そうだ、『スター・ウォーズ』の帝国軍の連中が着ているようなのがいいな」と。

 タキシード系は普通にマジシャンに見えてしまう。けれども、東洋人には見えたほうがいいから、詰襟のロング丈にして。そこで、細いズボンを穿くとインド人っぽくなってしまう。東洋人だけど日本人ではない、何人かわからない無国籍風にしようと。北海道に素敵なデザイナーの方がいて、その方と一緒に考えて。ほんと、いろんな人が知恵を貸してくれましたね。

『スター・ウォーズ』から着想を得たステージ衣装

――それとマリックさんといえばあの曲、アート・オブ・ノイズの『レッグズ』も欠かせません。

マリック あれは、『木スペ』の音響さんが、6曲ほど候補に挙げてくれたうちの1曲で。「ここから選んでください」と言われて、『レッグズ』だけが非常に印象的だったんですよ。聴いたことのない半音の変な曲だったけど、とにかく耳に残る。

 それから、カリスマ性を出すには「花道」が大事。偉い人は横から出てこないし、板付きでも登場しない。上から降りてくる、もしくは奥から登場してくるのが、カリスマ性を感じさせる出方としては一番。それで後光が差してステージの奥か上から出るようにしようと、プロデューサーが決めて。

 私の超魔術がそれまでのマジックと違うところは、いかに観客をハマらせるかどうか。トリックがあるとか、そういう現実を考えさせるんじゃなく、現実を忘れさせて目の前の出来事に没頭させる。そのためには伊勢神宮の参道を歩くような、現実から離れていくための準備時間が必要で、それを煽るのにピッタリだったのが『レッグズ』だった。