「私は素顔が地味で演歌顔ですから…」
――『木スペ』では超魔術に驚きましたが、マリックさんのルックスにもやられました。大きめのサングラス、独特な形状のオールバック、マオカラーの衣装と、『007』シリーズの悪役のような雰囲気で。
マリック いろんなところからアイデアを集めて、ああなったんですね。私は素顔が地味で演歌顔ですから、いろいろとやらないとね。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ、1985~1996年)で、ぴんからトリオの宮史郎さんと共演した時に「いつもマリックさんだと言われて困ってます」と仰っていましたから(笑)。
サングラスは、フランスの催眠術師が元ネタです。私がスプーン曲げを追いかけていた頃、初代・引田天功さんに見解を聞いたことがあって。天功さんに「催眠術でスプーンは曲がりますか?」と聞いたら「簡単に曲がるよ」とおっしゃったんです。さらに、催眠術で暗示をかければ10円玉でも曲げることはできると。
それを聞いて、催眠術を勉強しようと思って、世界中のマジックショップの経営者に「世界で一番すごい催眠術師は誰?」とテレックスを打ちました。どうせ勉強するなら、まずは世界一の催眠術師を見てからだ、と。
世界一の催眠術師のすごい技
――世界一の催眠術師とは、誰ですか。
マリック 全員があるフランス人の催眠術師を挙げました。それが覚えられないくらい長ーい名前の方で。その催眠術師がドイツのシュツットガルトでショーをやるというので、モスクワ経由で飛んで。実際にショーを観て、本当に世界一だと感じましたね。
その催眠術師はオノ・ヨーコさんみたいなサングラスをかけていて「催眠術を信じてない人、舞台へ上がって席に座りなさい」と言うんですよ。10人の観客が舞台上にある席に座ると、各人の前に催眠術師が立って、「私がサングラスを取って、あなたが私の目を見たら眠ってしまう」と暗示を掛ける。そしてパッとサングラスを取ると、観客はコテンと隣の人の肩に頭を置いて眠り込んでしまう。さすがにサクラだったら、私もわかりますから。
もうね、その人はすれ違いざまでも催眠術を掛けることができるらしくて。これは翌日の公演も見なきゃと思ったら、天功さんがお亡くなりになったという知らせが入って、急遽帰国しましてね。