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「ある人の胃袋にこの薬を瞬間移動してくれ」という客も…

――マジシャン宣言がうまくできず、インチキ超能力者だと叩かれてしまった。

マリック その一方で、ライブをやると楽屋に困った人が来るようにもなって「徳川埋蔵金はどこにあります?」とか聞かれたり、「ある人の胃袋にこの薬を瞬間移動してくれ」なんて言い出したりしてね。

 ライブでもお客さんの半分は手を合わせてありがたそうに拝んでいるけど、もう半分は暴露本を手にして“答え合わせ”に熱中している。マジックに対する価値観が違ってしまっていました。

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 プロレスと格闘技の違いみたいもので、プロレスはエンターテインメントで、格闘技は勝つか負けるかのリアルでしょう。いわば超能力は、格闘技であり、リアル。私が目指しているマジックは、リアルじゃなくてリアリティ。手品用の箱から花が出てきたらただのマジックとしか思われないけれど、何の変哲もない子供の帽子からハトを出したら「え!」という驚きと「なんだろう?」という不思議さと「なにかあるんだな」というリアリティが出てくる。

現在のMr.マリックさん

――バッシングや過労、そのストレスから生じた顔面麻痺などもあってテレビから距離を置きますが、90年代末からマジシャン宣言をされて超魔術を披露されましたよね。

マリック いろいろあって考えたんです。一瞬で人を笑わせたり、驚かせたりするエンターテインメントって、マジックくらいだなって。落語は聞きながら考えるし、漫才も落ちこんでいたら聞いていられないでしょう。でも、マジックで不思議なものをポンと見せたら笑っちゃう。それは赤ちゃんが「いないいないばあ」で笑うのと一緒で、不思議なものを求めている人間の本能につながっている芸事だから。こんなすごい芸が喜ばれないはずがないと思って、もう一回やろうと。

スプーンを曲げるMr.マリックさん ©文藝春秋

マジックが一番面白く見えるのはライブ

――マジシャン宣言から20年以上が過ぎましたが、現在のマジック界をどう思われますか。

マリック やっぱり、マジックが一番面白く見えるのはライブ、それもネタが初見であることなんですよ。2回目、3回目じゃなくてね。この原点や環境をもういっぺんしっかりと作ろうと、若い子たちを育てていますし、ライブをこれから大事にしていこうと思っています。

 8月11日には、名古屋マリオットアソシアホテルでコロナで延期になっていたライブをやりますのでね。ぜひ、生でこういうものは楽しんでもらいたいなと。 

写真撮影=三宅史郎/文藝春秋

INFORMATION

8月11日(祝)、名古屋マリオットアソシアホテルにて「Mr.マリック超魔術 ~超魔術&大魔術 ここに極まり~」を開催します。チケットは好評発売中。
https://www.associa.com/nma/banquet/event/70606209762abeb2572c25/

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