住宅価格の変化に一喜一憂する必要なし
住宅価格が下がったといって嘆く人がいる。なぜ嘆くのだろうか。純粋投資として場を張っている人にとっては一大事、どこで「損切り」するか、このまま保有し続けるかは最大の課題といえよう。
しかし、自宅として住んでいる限りにおいては別に所有者が困ることはほとんどない。むしろ地価が大幅に下がったりすれば、毎年請求される固定資産税、都市計画税が下がるという期待も持てるというものだ。
困る場合というのは家の担保価値が下がると借入金をあらたにしようとする場合に、予定していた金額が借りられないというリスクが出てくるくらいだろう。しかし、一般の人の大半は最初に購入するときに住宅ローンを組んでいるのであらたに自宅を担保にお金を借りるということ自体は少ない。住宅ローンとはよくしたもので、毎月の元利返済額をきちんと返済している限りにおいては、企業融資などと異なり、担保価値が下がったことを理由に一括返済や一部繰り上げ返済を求められたり、追加の担保差し入れを要求されたりはしない。何も困らないわけだ。
息子や娘に相続させたいと考える場合でも資産評価額が下がったからといって「住み心地」が悪くなるわけではない。むしろ評価額が下がれば、相続税は安くなる。喜ばしいことだ。
このように一旦買って所有した家の価格が下がることをなんでそんなに嘆くのか全く意味不明である。ひとつだけ気を付けなければならないのは、何らかの事情でローンが返済できなくなって、自宅を売却して借入元本を返済しなければならない場合、元本よりも担保価値が低ければ差額分を負担しなければならないということくらいだ。
「くらい」と言ったが、平成初期に家を買った団塊世代から現在の50代半ばくらいまでの世代には担保価値がレッドゾーンに入ってしまった人が意外と大勢存在する。この人たちの中には、リストラや自らを含めた家族の健康など様々な理由によって家を手放す必要が出てきているにもかかわらず家を処分してもローンが返済できない事態に陥っている人もいる。
消費者金融の広告ではないが、借入金の返済は計画的に、しかも背伸びをすることは禁物。毎日の生活を恙なく送るのに十分な資金計画のもと、自分の気に入った家を買うのならば、その後の値上がりや値下がりに一喜一憂などする必要は全くない。不動産投資とはそんなに簡単なものではないのだから、自分の買った家、ローンがきちんと払えて、住んでいて楽しいエリアを選択すればそれでよいのである。