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永原さんたちが続けているのは、相談を受けてから出産、そして産後に至るまで、切れ目のない支援。その運営の多くは、これまで「寄付」で賄われてきた。

2022年6月からは、兵庫県に委託される形で事業を運営することに。斎藤知事の視察などを経て、県がこの取り組みを「モデル事業」と認定したのだ。
県営住宅への入居のあっせんや、就職先として県内の企業を紹介してもらえるようにもなる。

 

斎藤知事:
さまざまな事情で苦しい立場に置かれている妊産婦さんへの支援の取り組みを見させていただきまして、一人でもサポートすることの大事さをよく理解させていただいた

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永原さん:
お困りの方は、妊娠したこの期間だけなんですよね、そこを乗り越えて就職先さえ決まれば、自分で自活できる方も多いので。本当に期待感いっぱいで、ありがたいなと思ってます

ネットカフェを転々…たどり着いた「いのちのドア」

マタニティホームMusubiで半年を過ごしたあけみさん。
あけみさんもまた、「特定妊婦」だった。

(Q.相手の方は分かっているんですか?)
あけみさん:
分からないですね。なおさら人にも相談できなくて、一人でぐるぐるぐるぐる…怖かったですね

 

風俗の仕事をしていたあけみさん。
妊娠が分かったとき、手持ちのお金も住む家もなく、ネットカフェを転々とする毎日。相談できる家族や友人はいなかった。

あけみさん:
そんなわけないのに、目をそらし続けてたら「なかったことになるんじゃないか」みたいな。すごい不思議な思考に、あの時はなって。「ほっといたらどうにかなればいいのにな」って考えがすごくあったんですけど、そんなことになるわけがないので…このままじゃまずいなって感じで、いろいろホームページとかで(調べた)

12月に夏服を着たまま、一人で「小さないのちのドア」をたたいた。

 

スタッフに付き添われて病院を初めて受診し、間もなく、元気な男の子を出産した。

ただ、自分では育てられないと考えていたあけみさんは、子供の将来を考えて「特別養子縁組」を決断。
永原さんたちのサポートを受けて、男の子は退院してすぐ、別の夫婦のもとへ引き取られた。