草彅 オリジナルの脚本を書いて監督までするとなると、ものすごいエネルギーが必要になってくると思うんです。金沢さんは今は普通の青年ですけど、撮影に入るといい意味でこっちがビビっちゃうくらいの情熱で引っ張ってくれて、だから僕も自然と自分の役になれたと思っている。主人公の2人の男の子(番家一路と原田琥之佑)は演技経験がなかったんでしょう? すごく良かったですよ。
金沢さんとは、子供の頃に見てきたものが似ている
金沢 単純にあの2人と一緒に長崎に行きたいと思ったんです。一路はオーディションでいろんな子供たちを見た中で、演技は一番ヘタだったんですよ。今回の映画にも少し出てる弟は天才子役なのに、兄の一路はオーディションを受けてはずっと落ちてると。でもまったく腐ってなくて、気になるヤツだった。一方の琥之佑はちょっと不良っぽい感じが魅力なんだけど、お祖父さんがあの俳優の故・原田芳雄さんと聞いて、納得した。
草彅 生まれ育った街の風景は全然違うけど、金沢さんと僕は同じ1974年生まれで、子供の頃に見てきたものが似ている。映画を観ていると心が和むし、時間の流れが緩やかになった気がして、故郷だったり子供時代だったり、忘れかけていたものを取り戻していくような感覚がありました。試写の翌日も、朝起きたらじわっと映画のことを思い出して。なんか、残る作品なんですよね。
金沢 試写の後、剛さんから「マジで良かったんだけど!」と言っていただけて、めちゃくちゃ嬉しかったです。
どのシーンの演技も一発オッケー
草彅 でもさ、その場でもっと感想を言いたかったのに、「ちょっとごめん」みたいな感じで、すぐ女優さんと喋りに行きましたよね。
金沢 貫地谷しほりさんが号泣してらしたんですよ。剛さんとはお話しする機会がちょくちょくありますけど、貫地谷さんはあの時聞いておかないと、涙の理由がわからないぞと思ったんです。
草彅 そう? 女優さんと喋るほうがいいんだなと思ってたけど(笑)。
金沢 違う違う!! ええっと、話を戻していいですか?(笑)この映画は僕にとって初めて監督する作品で、しかも相手は「草彅剛」。ずっと一緒にやりたい、脚本を書いてみたいと思っていた俳優なんです。自分の書いたセリフを読んでもらえることだけで、めちゃくちゃありがたいんですよ。
でも、現場に出たらありがたがるだけじゃなくて、演技で気になることがあったら怖くても言おうと決めていました。そうしたら、僕の想定を全部超えてくるんです。どのシーンの演技も一発オッケーで。
草彅 そうでした?