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はからずもクローズアップされた「政治と宗教」の問題

 安倍なき後の政治の課題についても触れておきます。はからずも安倍さんを銃撃した犯人の供述によってクローズアップされている、政治と宗教の問題。一般論で言えば、宗教団体は政治家にとって魅力的なものをすべて備えています。言うまでもなく、お金と票。それに、必ずしも組織が民主的に運営されているわけではないから、コトがあった時に非常に俊敏に動くことができる。この機動力も政治からすれば重宝だったりする。

 逆に宗教団体からすれば、自らの存立が国家権力のお目こぼし如何だというあけすけな事実も、政治権力に接近する強力な動機になりえます。象徴的なのは、自民党が下野してから自社さ政権で政権与党に戻った際、創価学会が国会に呼ばれたことがありました。この衝撃は、公明党だけじゃなく他の宗教団体にとってもトラウマになっているはずで、だからこそ政治家への肩入れを惜しまない。政治と宗教とひと口に言っても、旧統一教会という特殊事情のみならず、根源的な議論を行うタイミングかもしれません。

銃撃された安倍元首相 Ⓒ共同通信

安倍氏の遺志を継承するには避けて通れない「憲法改正」

 もう一つは、やはり憲法改正。これは岸田さんにとっても諸刃の剣でね。国葬を宣言し、安倍さんの遺志を継承する形の岸田さんは避けて通れない。もし憲法改正をなおざりにすると安倍さん言うところの自民党の岩盤支持層から突き上げを食らい、政権を揺るがすことになりかねない。とはいえ、安倍さんの遺志をいささか恣意的にとれば、それは改憲4項目に集約するといえなくもない。

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 その上での「お試し改憲」という手はあると思います。(1)自衛隊の明記、(2)緊急事態対応、(3)参議院の合区解消、(4)教育環境の充実という4項目のうち、一番異論のないところ、現実的には(3)参議院の合区解消あたりには手を出してもいいと考えても不思議はない。よくこのように喩えるのですが、憲法改正と書かれた風呂敷を広げてみれば、4つの茶碗が入っていた。どの茶碗で飯を食おうと、憲法改正をする事実には変わりはありません。

岸田首相と安倍元首相 Ⓒ共同通信

 岸田首相にとっては、自ら設定した「人事と国葬」の成否こそが長期政権に辿り着けるかどうかの最初にして最大の試金石になりそうです。