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 しかし、同時に安倍さんは国民世論の分断という大きな「負の遺産」を残しました。その他道半ばの政策も多々あります。安倍さんには何度もインタビューしてきましたが、なお聞きたいことは山ほどありました。その点は大きな悔いが残ります。

岸田首相 Ⓒ共同通信

国葬のある秋まで政治の時間は止まった

 自民党がこれからどうなっていくか。これも大きな関心事でしょう。報道で党内のいくつかの動きについて取り沙汰されています。たとえば大宏池会構想。私は岸田さんがこれにそれほど熱心に取り組むことはないと思う。

 構想というのは実現してしまったら陳腐なものになるのが世の常。構想の内が華。最も理想的な形を論じていられることに意味があるわけです。菅義偉さんの勉強会が立ち上がるという話もありますが、あれも新聞が騒いでいるだけで、実態は見えていませんし、なにより岸田さんの打った国葬の一手で、表立って動くことをいやがる人もたくさんいるはずです。いずれにせよ、国葬のある秋まで政治の時間は止まったわけで、岸田総理総裁以外が明け透けな動きをすることはないんじゃないでしょうか。

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 大胆な見立てをすれば、幹事長人事も焦点です。萩生田光一さんの名前が挙がっていますが、萩生田さんにとって幹事長に収まることが良いことなのか、安倍派代表として幹事長ポストを取ることが良いことなのか、は一考の余地があるでしょう。

 必ずしもみんながみんな、萩生田さんのことを安倍晋三の正統な後継者だと認めているわけではない。その不安定な立場で岸田さんが提示するかもしれない幹事長ポストに食いつくことは、先々派閥の分断を招くおそれもあると思っています。もし岸田さんに深謀があれば、平気で幹事長を打診するかもしれない。長期政権を手にした中曽根、小泉、安倍の各氏とも皆節目で大きな人事権を行使してきました。あるいは、今の幹部陣容をそのまま温存するかもしれない。どうあれ、ボールは岸田さんの手の中ということに変わりはないのです。