〈教育にエビデンスを〉
本書の主張は極めてシンプル。情緒的でほぼ無根拠な提言が溢れる日本の教育問題の現状に、一石を投じるべく上梓された1冊だ。
「『何を語るか』については、企画の初期から著者ともどもまったくブレはなかったです。しかしタイトルをはじめ、『どう見せるか』の部分はとても悩みました。たとえば、通常は書店の教育関係のコーナーに置かれるような内容なのですが、かなり迷った末、経済学の棚に置かれるようにしました。教育関係の本はやはり、自分の子育てに成功したお母さんの体験談の方が受けがよいので、本書のようなロジック重視の本は、経済学に関心のある読者層にアピールした方がよいと判断したんです」(担当編集者の井上慎平さん)
結果、子育ての現場で活躍する親や教師はもちろん、教育関係の政策決定に携わる官僚や政治家にも広く読まれる本に。著者は現在、教育再生実行会議の有識者に名を連ねてもいる。
「今の読者からは、『柔らかい内容の文章はウェブで読めばいい』という空気を感じます。だからこそ、本として出すからには、論理性が高く、それなりにまとまった分量のテキストでなければ語れないだけの内容が必要なのだと感じています。そもそも本というフォーマットは、画像や動画といった情報量の多いコンテンツを短時間で楽しむ方向に進んでいる時代の流れに逆行している存在ですしね」
2015年6月発売。初版1万2000部。現在12刷18万部