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「このままでは危ない」恐怖のあまり耳を塞ぎ…「究極の心霊スポット」に取り残された男性は何を聞いてしまったのか

「このままでは危ない」恐怖のあまり耳を塞ぎ…「究極の心霊スポット」に取り残された男性は何を聞いてしまったのか

怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇――「究極の心霊スポット」

2022/08/04

genre : エンタメ, 読書

note

 その究極の心霊スポットとは、ある山の中にあるお寺でした。私はすごく納得しました。心霊スポットといってまずよくあるのは、事故や事件、あるいは戦争などで人が亡くなった場所です。次に多いのは、山と水辺です。いわゆる、死者が集まる場所です。

 そういう意味では、教えて貰った場所もまた、お寺で、かなり大きなお墓もあり死者も集まります。そして、山の中であり、境内には大きな池もあります。つまり、心霊スポットの要素を網羅しているわけです。

 私は早速、叔父にその事を話しました。どうしても行きたくて、3日ほど休みが欲しいと頼みました。いつも私が言うと嫌な顔をするのですが、この時は常連のお客さんからの話だったからか、すぐに休みの許可をくれました。

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 出発当日、私は愛車で出かけました。目的地までは車で4時間ほど掛かりました。駐車場に車を停めると、そこからは徒歩15分程で、今晩泊まるお宿があります。私は先にチェックインを済ませるため、宿へと向かいました。

案内された部屋は、湿った臭いが…

 宿は、出発前から想像していた通り、かなりの歴史を感じる建物でした。玄関を開けて中に入ると、腰の曲がった老婆のお迎えがありました。怪談、心霊スポット好きにはたまらないシチュエーションです。案内された部屋は、湿った臭いがして、畳は擦り切れ、夏だというのにこたつが置かれています。もしかすると、冬から誰も泊まりに来ていないのではないかとすら思えました。

 チェックインを済ませると、本来の目的地であるお寺に行くことにしました。老婆の話では、ここから10分程歩いた所に本堂があるとのことでしたが、実際は20分以上歩きました。

 本堂に着くと、受付と書かれた看板が見えました。案内に沿って受付に行くと、お守りやお札などが売られていました。そしてお経をあげて欲しい人はここで申し込む様で、申し込み用紙が置かれています。しかし、拝観時間が過ぎたのか、受付には人が居ません。

写真はイメージです ©iStock.com

 次に、本堂を右に進むと、龍神池と書かれた木の案内板がありました。かなり近くで見ない限り、読めないくらいに文字は薄くなっています。

 その案内板の通り、私は龍神池の方に向かってみました。細い林道を進んで行くと、突然大きな池がありました。池は、長年手入れがされていない感じのする雑木林に囲まれていました。まだ夕方の5時過ぎでしたが、かなり不気味な雰囲気で私は嬉しくなりました。そして、夜にまた来ることにしました。

 先程からお寺の境内を色々と見て回っているのですが、誰一人として参拝者と会っていない事に少し違和感を覚えました。恐らく拝観時間も過ぎているし、平日である事などを考えると普通の事なのかもしれません。ですが、お寺の関係者すら見かけないのです。