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「このままでは危ない」恐怖のあまり耳を塞ぎ…「究極の心霊スポット」に取り残された男性は何を聞いてしまったのか

「このままでは危ない」恐怖のあまり耳を塞ぎ…「究極の心霊スポット」に取り残された男性は何を聞いてしまったのか

怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇――「究極の心霊スポット」

2022/08/04

genre : エンタメ, 読書

note

「ザザザザザザ」早歩きの足音と「タッタッタッタッタ」と走っている音が混じって聞こえるのです。思わず振り返りましたが、勿論、そこには誰一人として居ません。しかし明らかに歩く自分の足音ではなく、走っている人の足音が混じって聞こえて来ました。

「このままでは危ない」私は身の危険を感じました。そして走り出そうと思った瞬間、スマホのライトが消えてしまいました。真っ暗になった視界に、思わず私は座り込んでしまいました。

静寂の中で聞こえてきた「人の声」

 動きを止めた私の耳には、まだ人の足音が聞こえています。しかも明らかに走っている音です。そしてその音はやがて私の直ぐそばまでやって来ました。私は恐怖のあまり、しゃがみ込んだまま両耳を塞いで目を閉じました。

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「ザザザザザザ」何者かの足音は、明らかに私の周りで立ち止まりました。静かになった。そう思ったその時、何やら人の声が聞こえて来ました。

写真はイメージです ©iStock.com

「自我得仏来 所経諸劫数 無量百千万 億載阿僧祇……」誰かがお経を唱える声がしたのです。そして次の瞬間、一斉にたくさんの人が同じようにお経を唱える声がして来ました。

 私はこの場を離れたい、そう思ったので、大声で叫びながら、思い切って暗闇に向かって走りはじめました。この時は自分がどの道をどの方向に向かって走っているのか、わからないまま走ったのです。

 そんな私を、お経の声が追いかけてくる事はありませんでした。よかった、半分泣きそうになりながら、走りました。もう精神的にも肉体的にも限界が来ていた私は、道の途中で足がもつれて倒れてしまいました。

 転んだ私の目に、何やら光の玉が見えて来ました。そしてその光は私の方へと向かって来ていました。

 すると、「おーい、おーい」今度は、年老いた女性の声が聞こえて来たのです。

「やっぱりここに居られたか。大丈夫か」私が見上げると、そこには宿のお婆さんが懐中電灯を持って立っていました。

 私は宿のお婆さんに連れられて宿に帰ることが出来ました。