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「コロコロ」が乗り遅れたブームたち

 小学生男児の関心事には何でも首を突っ込む「コロコロ」ですが、残念ながらうまく関われなかったヒット商品もありました。

 一つ目は「ハンドスピナー」。親指と中指で挟んで本体を回転させるとベアリングの力で数分回り続けるこの玩具は、春ころにネット記事で散見、すぐに編集部でも購入する者が現れました。しかし、手慰み的あるいは中毒的に回し続けるものの「だから何なの!」と記事として取り上げる切り口が見出せず、いつの間にかブームも過ぎ去ってしまいました。子どもたちが気持ちよさそうに回してる姿が印象に残ります。

ハンドスピナー ©iStock.com

 もう一つは「うんこ漢字ドリル」です。“うんこちんちん”を編集方針の柱とする弊誌にとって、この本の出現は「やられた」感が強かったです。立案者の方にお会いする機会もありお話を伺って共鳴する部分も多分にありました。“うんこちんちん”はいつの時代も小学生男児の“鉄板”です。まだまだ伸びしろはあるのだと、勇気をもらったヒット商品でした。

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 守備範囲ではないのですが、このクリスマスシーズンになって女児向けの玩具「ミラクルちゅーんず!」が突如売れ始めたのも印象に残りました。

バトルホビー最後の砦

 アプリ及びコンシューマーと、ここまで主にゲームについて取り上げてきましたが、「コロコロ」にとって一番の得意分野はバトルホビーです。“勝った負けた”から生まれる感情は、男児の原初の衝動であり、それを体現するホビーは、ミニ四駆の時代から「コロコロ」の看板です。勝負に負けた子どもが泣いている姿を見ると「このホビーはブームになる」と確信します。大人から見ればたかがホビーですが、子どもたちにとってはそれだけの情熱を傾け、一心不乱に打ち込むべき事なのです。

「ベイブレードバースト」大会は大盛況(提供:『コロコロコミック』編集部)

 2017年、そんな男児たちの手の中にあったもの、それは「ベイブレード」でした。現代版ベーゴマ遊びである「ベイブレード」のブームは今回が3度目となります。しかし今までの2回と同じやり方では人気は獲得できません。そこで今回開発された新しい機構が「バーストシステム」。なんとコマ同士がぶつかり合うと、まれにパーツがバラバラに弾け飛ぶ仕掛け。単純明快!このバーストシステムが子どもたちを興奮させました。タカラトミーの商品開発力と、手前味噌ですが編集部のキャラクター及び世界観構築力が見事に調和したからこそ、新たなベイブレードブームが生まれたのです。

「破壊して勝利せよ」を背景に戦う子どもたち (提供:『コロコロコミック』編集部)

 ただし、バトルホビーで成功を収めているのはベイブレードのみ。勝ち負けのある遊びをしたくない、あるいは自分が傷つきたくないという“気分”が子どもたちの世界に確かに存在します。そしてもしかすると2017年の現在では、そういった子のほうが多数派かもしれません。

「コロコロ」読者が将来なりたい職業の上位に、数年前からユーチューバーがランクインしています。“好きなことで、生きていく”というユーチューバーの提示する生き方が、今の子どもたちの気分にピッタリで、カッコよく見えるのでしょう。“人生そんなに甘くないぜ”とおじさんは当然思うのですが、一方で、せめて小学生のこの時期だけでも、そんな夢を見させてあげたいとも思うのでした。