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「世界的に見て、東京都市圏は何番目に大きな街だと思いますか」地域エコノミスト・藻谷浩介が語る“一極集中の弊害”

「世界的に見て、東京都市圏は何番目に大きな街だと思いますか」地域エコノミスト・藻谷浩介が語る“一極集中の弊害”

『トカイナカに生きる』インタビュー#1

2022/08/01

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル

子どもが生まれない場所に若者を集め続ける日本

「一極集中の問題点なんて20や30すぐに挙げられるのですが、ニューヨークしかみたことなくてニューヨークが世界一だといっている人に、それは勘違いだと理解してもらうのが大変なのと同様、『東京教』に入信してしまっているような人に一極集中の問題を説明するのも面倒なことなんです。

 ですが、この話を逆方向からいうならば、東京一極集中にメリットなんて一つもない。例えば東京という町は婚姻率は日本一ですが、出生率は全国最低です。若者がたくさん集まる町なのに次世代がつながらない。人間も生き物でして、都市はその主要な生息地なのですが、東京という生息地では生態系が完全に崩壊してしまっている。子どもが生まれない場所に若者を集め続ける日本で、人口が減るのは当たり前です。

『そんなことを言っても、東京は若者を集めて栄えている』なんて、皆さん思ったりするわけです。少子化の恐ろしさがぜんぜんわかっていない。

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ニューヨークの街並み ©iStock.com

 仮に『若者』を、『15歳から44歳』としましょう。まだコロナの始まる前の話ですが、2015年元日から2020年元日までの5年間に、東京には59万人の『若者』が転入超過しました。上京した『若者』の方が帰京した若者より59万人多かったのです。では同じ5年間に、都内に住む『若者』は何人増えたでしょう? 『えっ? 59万人増えたんじゃないんですか』、と思う人は、繰り返しますが少子化問題が理解できていないのです。

 答えは、8万人の減少なんです。これはまだコロナ前の、一極集中の極みのころの話ですよ。59万人流れ込んだはずが、トータルすると8万人減っている。同じ5年間に45歳を超えた東京在住者は118万人なのに対して、15歳を超えた在住者は51万人しかいなかった。都内で生まれた子どもが、30年間で、半分以下に減ってしまった結果です。これだけ少子化してしまうと、都内の『若者』は118-51で67万人減るところだったのですが、東京はパラダイスだと勘違いした田舎の若者59万人の上京のおかげで、67-59=8万人の減少で済んだのです。

 しかも東京に59万人流入しているということは、地方ではその分減っている。出生率の高い地方にいれば、もう少し子孫も増えたかもしれないのに。『一極集中が効率的だ』と言う人は、『東京は生産性が高い』とか言うんですが、それはお金の話。人の生産性は最低です。人間の本質は、金の計算にあるのではなくて、生き物であることなんですけれどね」