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「応仁の乱は、経済的な一極集中の崩壊」「私も東京を脱出します」地域エコノミスト・藻谷浩介が描く“日本の未来”

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『トカイナカに生きる』インタビュー#2

2022/08/01

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル

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いま「トカイナカ」が注目されるわけ

 おりしも本書『トカイナカに生きる』の出版の前後に、NTTは「社員3万人を原則テレワークとする。日本全国どこに住んでもいい。出社は出張扱いで飛行機代も出張費で出す」と発表した。ヤフーもまた、昨年度までは社員の居住地は「翌日の午前11時までに出社できること」という条件があったが、今年になって撤廃した。東芝も、リモートワーク社員を増やすと宣言している。

 そうした大企業がこの方針の理由で共通して語るのは、「人材確保のため」。つまりオンラインで働けるとわかったいま、毎日出社を強制する会社には、若者たちは魅力を感じない、入社しないということだ。

藻谷浩介氏 ©文藝春秋

 そのことを、藻谷は独自のいい方でこう言い表した。

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「いまこの時代にトカイナカが注目されるのは、歴史的に表現すると二つのいい方があります。いまが幕末だという見方と、応仁の乱だという見方の二つです。

 幕末は、勝海舟が『仕付け糸をしゅっと抜いたら、幕府という服はさっと布に戻っちゃった』と形容した、明治維新の直前でした。幕末まで日本人をぎゅうぎゅうに縛っていた身分差別は、そのままでは19世紀の世界にまったく通用しないものだったので、明治維新で一気に撤廃されます。令和の日本でも、男女差別に始まって、学歴差別、大企業と中小企業の差別、政治家や経営者の世襲、それに東京が優秀で地方はダメというような固定観念と、実力を反映しない序列が固まってしまっている。ですがこれらも、21世紀の世界にはまったく通用しない。日本が生き残りたければ、昭和の序列意識はこれからどんどん解体して行かざるを得ない。その意味でいまはまさに幕末なんです。