「さしすせそ」だけじゃ料理はおいしくならない
――掟さんは自作料理にもこだわりがあるそうですね。『食尽族』でも、生筋子の醤油漬け、カレー、餃子、糖質制限ハンバーグなどの特製レシピを公開しています。
掟 全然素人レベルなんで申し訳ないんですけど、ちょっとうまい料理を作りたいなら簡単です。調味料をたくさん揃えたらいいだけ。ラーメンだって、豚骨スープに鶏チンタン、昆布や煮干などの乾物と一杯の中にいろいろ加えて味に深みを生むでしょ?
だから自分で料理を作るときも、だし系の調味料を何種類か使うと味がぐっと良くなるんですよ。その辺のスーパーに普通に売ってる調味料で充分です。煮物を作るなら、粉末だしパック、白だし、味の素、味の素の鶏ガラスープ、味の素の中華あじ、ほんのすこしだけオイスターソースも入れて……。分量には注意ですが、それだけ使えば大体おいしくなります。
オイスターソースひとつとってもメーカーによって味が全然違います。自分が今使っているのはトマトコーポレーションの安価なものですが、旨味と甘味のバランスが丁度よくて重宝してます。
煮物を作るなら甘めの味付けの李錦記で、炒めものを作るなら甘みが少ない富士食品工業のものを。キッコーマンのオイスターソースもサラッとしていて使い勝手が良いですね。「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)だけじゃ料理はおいしくならない。プラスアルファの調味料を増やすだけで、食生活は一気に豊かになります。
――掟さんの食道楽をご家族はどのように受け止めているのでしょうか?
掟 うまいものの食べ歩きが趣味で電車乗って遠出するのも苦じゃないけど、家族はそうじゃない。それに自分が好んで食べているものが家族の食の好みと違っているので、家で家族が食べる分の食事を作っておけば、行っていいことになってます。
家の料理は嫁ではなく全部俺が作っているんですよ。料理を作るのが好きだからというのもあるんですが、その日自分が食べるものは自分で決めたいという品のない理由が本当のところで。だから嫁に対しては、「いつも俺に料理を作らせてくれてありがとう。俺が食べたい献立優先しちゃってごめんね」という気持ちですね。
写真=山元茂樹/文藝春秋
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