「もともとこの高架は…」
「もともとこの高架は、嵐山方面から京都駅を経由しないで大阪方面に向かうことのできる短絡線だったんです。臨時列車や貨物列車が走っていました。それを梅小路京都西駅ができるタイミングで廃止することになって、その跡地をどうするか検討した結果、ニューヨークのハイラインを模して現在の形になりました」
こう話してくれたのは、JR西日本近畿統括本部京都支社地域共生室長の野口明さん。野口さんによると、廃線跡の一部は歩道橋に流用されたものの、それ以外の高架区間の使い道に頭を悩ませていたそうだ。そこで思いついたのが、飲食の屋台を置くことだった。
「私自身、この近くに住んでいるものですから、ホテルがいくつもできたりしているのに飲食店が少ないなあなどと思っていたんです。
そこで、廃線跡にコンテナか何かを持ってきておしゃれなバーにしたらいいんじゃないか、と思いついた。京都市さんが京都駅西部エリアの活性化構想を進めていまして、それと連携しながらレールバイクなどのアイデアも出ては消えていって、最終的に現在の形になったんですね」(野口さん)
実際にはコンテナを高架上に運び入れるのにはかなりのコスト・手間がかかることもあって、比較的簡便な屋台になった。さらにレールがそのままむき出しだと危険だということでコンクリートで埋め立てた。
廃線区間のうち40mを先行整備、4つの屋台を並べて2019年11月から12月にかけて実証実験として営業を行っている。
「高架の廃線跡をそのまま利用しているところが珍しかったのか、かなり話題になってたくさんの方に来ていただいた。それで、さらに40mを追加で整備して屋台も増やし、2020年から本格的にやっていこうということになったんです」(野口さん)
コロナ禍ど真ん中での営業開始ということで苦労もあったが…
整備区間の拡大に合わせて屋台は4つから8つに増え、ステージやフォトスポットも設けた。フォトスポットではレールが見えるようにして、“廃線跡”ということが実感できるようにしているのもポイントのひとつ。本格的に営業がはじまると、入場待ちになるほどに人気を博した。
「夏場は夜の営業なんです。高架なので風が気持ちよくて見晴らしもいい。京都タワーや東寺の五重塔もよく見える。いかにも京都らしい風景を楽しんでいただけると思いますよ」(野口さん)
コロナ禍ど真ん中での営業開始ということで苦労もあったが、徐々に観光客が戻ってきてからはホテルの宿泊客が窓からハイラインの賑わいを見て足を運ぶことも増えてきたという。まさに、京都駅の西、梅小路エリアの知る人ぞ知るシンボルになろうとしているのだ。確かに、そよ風そよぐ高架上で町を見下ろしながら飲むビール、実にウマそうである。
「私の所属している地域共生室は自治体さんと話をしながら連携を深めていって、いろいろな取組をしていこうという部署なんです。この梅小路ハイラインも京都市さんとずっと相談しながら計画を進めてきました。高架上に電気や水道を通すにあたっては、本当に京都市さんの尽力がなければできなかったと思います」(野口さん)