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“ニューヨークみたいな場所”がなぜか京都と滋賀に…ナゾの「ハイライン協定」とは?

京都駅から20分…滋賀県草津のナゾ#2

2022/08/01

genre : ニュース, 社会,

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「路線の存続」「列車の本数維持」鉄道会社と地域の関係というとギスギスした話題も多いが…

「そんな市街地の真ん中に、天井川の跡があるって珍しいじゃないですか。高台なので見晴らしがよくて、天気がいい日には大津市内や琵琶湖の向こうの比良山地もよく見えるんですよ」(長谷川さん)

 と、梅小路ハイラインとほとんど一緒のお話。それぞれ廃線と廃川の跡の再整備、見晴らしのいい高台といった共通点、そして京都と草津という絶妙な距離感。そうした巡り合わせもあって、草津市とJR西日本は2020年12月に「ハイライン協定」を締結。お互いがお互いの“ハイライン”に出店してイベントを行うようになった。そのひとつが、今年5月の草津川ハイラインのイベント、というわけだ。

「草津市はJRの路線と駅があってこそ発展してきた町です。通勤通学でJRさんを使っている人もたくさんいます。ですから、ハイライン協定を結んで一緒にいろいろできることは大きな意味があると思っています。イベントには草津駅の方々も積極的に参加していただきましたし」(長谷川さん)

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(写真=鼠入昌史)

「弊社ではエリアごとに地区会という組織があって、その若手が部署横断で自分たちで考えて地域との関わりを持っていくという流れが出てきています。草津川ハイラインのイベントもそうで、駅員はもちろん技術系の社員も参加しています。そういった地域との関わり方は、今後も進めていきたいですね」(野口さん)

 鉄道会社と地域の関係というと、最近はどちらかというと路線の存続や列車本数の維持を巡って対立している、などというニュースを目にすることが増えている。草津市を含む滋賀県内でも、2022年のダイヤ改正で新快速が減便されるなど、必ずしも地域にとって諸手を挙げて鉄道会社と共同歩調とはいかない部分もあるだろう。

 しかし、一方では地域の活性化を巡って自治体と事業者が一体となって取り組んでいくことも欠かせない。

手作り感が残すもの

「地域共生室は2011年に滋賀県さんと包括的連携協定を結んだことをきっかけに発足しました。以来、いろんな自治体さんと腹を割って話せる関係づくりを進めています。

 お互いそれぞれの意見はあっても、前に向かうために一緒に何ができるか、という関係性を作っていく。ただたんに鉄道を走らせているだけではなくて、地域の中でもっと親しみを持ってもらいたい。

 何か地域での困りごとがあって相談していただいたら、入口でNOではなくてどうしたら解決できるかを一緒に考える。そのためには、組織と組織でしっかりとつながっていくことが大切だと思っています」(野口さん)

野口さん(左)と長谷川さん ©鼠入昌史

 鉄道会社と自治体が手を組んで行うイベントというと、イベント会社や代理店などが入った大規模なものを想像しがちだ。しかし、ハイラインのイベントはまさに手作り。その手作り感が、地域と鉄道との関係性を高めていくことにつながるのだろう。一朝一夕に結果が出るわけではない。しかし、こうした地道な取組こそが、鉄道も町も発展する未来へとつながっていくのかもしれない。

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