じつは“もうひとつのハイライン”が…
そしてこの野口さんが率いる地域共生室では、京都だけではなく他の地域でも自治体との連携を深めている。そのひとつが、滋賀県草津市にある“もうひとつのハイライン”。2022年5月には、そのハイラインでJR西日本も協力したイベントも行われている。ただ、こちらのハイラインは鉄道の廃線跡ではないようで……。
「草津市さんのハイラインは、鉄道の廃線跡ではなく、草津川の廃川跡。同じように“はいせん”ということで、連携して何かできないかということになったんです」(野口さん)
草津川の廃川跡のハイライン? いったいどういうことなのか。草津市さんにも聞いてみた。
「もともとこのハイラインは、かつて草津川が流れていました。ただ、天井川だったのでどうしても洪水被害が多かったんです。それで、国の事業で草津川を付け替えましょうとなって、2002年に南側に新しく川を作り、天井川の草津川が廃川になった。その跡地を草津川跡地公園として整備したんです」(草津市役所都市計画部都市地域戦略課・長谷川憲一課長)
京都まで約20分の草津でも…
天井川とは土砂の堆積などで周辺よりも高いところを流れる川のこと。教科書にも出てくる典型的な河川地形のひとつで、天井川を越えるために川の下にトンネルまで掘られている。ちょうど草津市内を通っている旧中山道も、そしてJR琵琶湖線も旧草津川をトンネルで抜けている。
そんな天井川トンネルが廃止され、その跡地が公園として整備されて“ハイライン”つながりでイベントが行われたというわけだ。
「実際には整備にあたっていろいろなアイデアもあったんです。ですが、やはり歴史的な意味合いも大きい天井川ですし、それをそのまま残す形がいいだろうと。そこで約7kmを6区間に分けて整備を進めています。草津駅に近い区間では、緑地として公園に整備するのと合わせて3つのテナントに出店していただいて、さらに定期的にイベントも行って賑わいを生み出そうと、そう思ってやってきました」(長谷川さん)
草津市は、新快速に乗れば京都まで約20分、大阪までも1時間かからない場所にあるベッドタウン。駅の周りには大きなマンションも建ち並び、若い世代の流入も多い。いわば、いまのご時世珍しい“成長中”の町だ。歴史的には旧中山道と旧東海道が交わる草津宿が置かれていた地としても知られる。