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 また、建機リース会社で経理担当をしている野々村博人さん(仮名)は、私的な資金流用や脱税といった不正を繰り返すヤバい社長に、知り合いの税務署関係者を引き合わせました。

「知り合いの税務署関係者に頼んで、会社に来てもらいました。彼は税務調査の担当ではないのですが、あたかも調査員であるかのように社長に紹介し、私から社長に『わが社では会社の資金流用や脱税といった不正行為は一切していません。ですよね?』と伝えると、社長は『当たり前だ。税務署の方の手を煩わせることはしていない』と言い切りました。それ以来、社長の不正行為は激減しました」

 もちろん、ヤバい社長が天敵にまったく動じないということもありますし、こういう適切な役回りの人が見当たらないことも多いでしょう。その場合、残念ながら退職を考えることになります。

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パワハラ社長がなぜか「恩人」になったケースも

 ただ、ヤバい社長から逃げ去るのではなく、後々「良かった」と思える有意義な退職にしたいものです。そこで最後に、現在、コンサルティング会社を経営している市村俊樹さん(仮名)の事例を紹介します。市村さんは、新卒で入社したITベンダーでヤバい社長と出会ったことがきっかけで、起業家に転じました。

「私は営業成績が悪かったので、新人の中でもとりわけ社長に目を付けられ、暴言罵声を浴びる毎日でした。入社して半年後に転職を考えたのですが、社長にボコられて尻尾を巻いて辞めるのは悔しいと思いました。パワハラ社長ですが不思議と業績の良い会社だったので、『よし、社長の経営のノウハウを学び取って、自分も事業を始めよう』と心に決めました。あのパワハラ社長のおかげで起業できて、いまの自分にとって大の恩人です」

 会社生活では、色んな苦難に遭遇します。苦難に対処するだけでなく、市村さんのように、苦難を糧に大きく成長するのが理想です。

 経営者のパワハラやセクハラは決して許されるものではありません。しかし、できることなら、ヤバい社長との出会いも無駄にならないようにしたいものです。