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「会社側にバレないように、私が受けた被害ではなく、社長秘書など私以外の女性社員の被害を相談員に伝えました。ところが、相談して3日後、総務部長から呼び出され、『事実無根のことを社外に触れ回ってもらっては困る。野口さんを名誉棄損で訴えるつもりだ』と脅かされました。私が謝罪して事なきを得ましたが、どうして被害者の私が謝罪しなければいけないんでしょうか。理不尽すぎます」

 従業員が何万人もいる巨大企業ならともかく、中堅・中小企業では、会社側がその気になって調べれば相談した「犯人」を簡単に割り出すことができます。相談窓口の利用には大きなリスクがあると考えるべきでしょう。

 同じように、SNSでヤバい社長の行状を発信する場合も、発信者が簡単にわかります。ヤバい社長に打撃を与えるという点ではSNSは効果的ですが、自分自身のことを考えると、やはりお勧めできません。

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 なお、労働組合がある会社なら、労働組合に相談するという方法があります。ただ、労使協調路線の日本企業では労働組合が事実上「第2人事部」であることが多く、誰がどういう相談をしたのかは人事部に筒抜けの可能性もあります。こちらも、かなりリスクがあります。

ヤバい3代目・金正恩社長はどうなったか?

 それやこれや見てくると、ヤバい社長の言動を改めさせる妙案はあるのかなと心配になってきます。しかし、成功例がないわけではありません。

 従業員の前では傍若無人のヤバい社長ですが、人間誰しも、自分よりも立場が上の相手や天敵がいるもの。そういう相手に対してヤバい社長は、自分の弱みや間違った言動を見せたくないと考えるので、この習性を利用します。

 冒頭で紹介した「社長のあだ名は金正恩」というコメントは、建設会社で働く末松裕子さん(仮名)のものです。ヤバい3代目社長がまったく頭が上がらない彼の母親を引っ張り出して、一芝居を打ちました。

「社員の発案で金正恩の母親のお誕生日会を開催し、そのついでに母親に職場の見学に来てもらいました。金親子の前で私たちは、金正恩がいかに慈悲深く、従業員のことを大切に思ってくれているか、歯の浮くような感謝の言葉を伝えました。すっかり気を良くした母親は、『この子は子供の頃からとっても人に優しかったんですよ』と金正恩を大絶賛。その日を境に、金正恩のパワハラは影を潜めました」