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たった1回の訴えで「冬のボーナス50%カット」

「昨年、社長に公私混同や資金の私的流用を控えるように訴えたところ、『一人前に仕事をするようになってから俺にものを言え』と一喝され、聞き入れてもらえませんでした。それから1週間して、人事部から私が入社してから現在までに犯した仕事のミスを列挙した文書が届きました。昨年の冬のボーナスは半分に減らされ、春には降格処分。さすがに会社に居づらくなり、いま転職活動をしています」

社長の不正に意見しただけなのに… 写真はイメージです ©iStock.com

 他人のアドバイスに聞く耳を持っているまともな経営者なら、元々パワハラ・セクハラ・公私混同などを繰り返すということはありません。直談判はやっても効果がなく、マイナス面ばかり。正義感に駆られて直談判するのは、やめておいた方が賢明です。

 では、「触らぬ神に祟りなし」ということで、黙って見過ごすべきでしょうか。従業員が黙っていると、ヤバい社長は「俺のやり方は正しい」「従業員は納得している」と勝手に解釈し、ヤバい言動をエスカレートさせることがあります。やはり何らかの対応が必要です。

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専門家は相談窓口の利用を勧めるが…

 ここでコンプライアンスの専門家が決まって推奨するのは、相談窓口の利用です。2020年6月に改正労働施策総合推進法(通称・パワハラ防止法)が施行され、2022年4月から中小企業でもハラスメント相談窓口の設置が義務化されています。

 ただ、心配なのは、自分が相談したという事実が会社側に知られてしまうのではないか、という点。匿名での電話相談を受け付けるなど、以前よりは仕組みや運用の改善が進んでいますが、本当に相談窓口を頼って良いものでしょうか。

 専門商社に勤める野口恵理子さん(仮名)は、社長のしつこいセクハラに耐えかねて、社外の相談窓口に電話しました。匿名で相談したのですが、会社側は野口さんの「犯行」であることをあっさり掴みました。