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コーラとクールコーラを飲み比べる

 手始めにコカ・コーラとクールコーラの飲み比べだ。カップに注いでみると、色に大きな違いはなく、炭酸の泡立ちも同じ程度だ。見た目には違いが見られなかった一方で、匂いには明確に違いがあった。クールコーラだけを嗅げば、確かにコーラの匂いだと感じる。しかし、コカ・コーラには清涼感のあるさわやかな香りがあるのだ。

 匂いではコカ・コーラが“正規品”の貫録を見せつけたが、肝心の味に違いはあるのだろうか。

果たして味の違いは… Ⓒ文藝春秋/撮影・平松市聖

 まずクールコーラを口に含んでみる。コーラ独特の苦みにも似た風味と濃厚な甘さが口の中に広がる。確かに記憶の中にあるコーラの味と似ているようだ。これは何も知らされずに飲んだらコカ・コーラと勘違いしてしまうかもしれない。

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 では、本物のコカ・コーラはどんな味だったか。一口飲むと思わず言葉が漏れてしまった。

「ああ、やっぱりこっちのほうが美味しい」

 爽やかなスパイスの香りが鼻を抜けるとともに、口の中ではじける甘さが心地いい。100年以上続くコカ・コーラのオリジナリティと風格が感じられる堂々たる味である。ふたたびクールコーラを飲んでみると、その差は歴然だ。クールコーラはあくまでコーラに似た味で、例えると子どもの頃、駄菓子屋で舐めたコーラ味の飴玉のような素朴な味なのだ。甘味料の違いか、クールコーラはべたっと舌に残る甘さだが、コカ・コーラの甘さはキレがある。

本家のほうがお気に入り Ⓒ文藝春秋/撮影・平松市聖

 ただし、クールコーラも十分コーラとしては美味しいと言えるだろう。何も知らされずにクールコーラを飲んだらコカ・コーラと勘違いしてしまうほど清涼飲料水としては完成度が高かった。

レモンライム風味のスプライトvsストリート

 続いてスプライトとストリートの試飲だ、余談になるが、記者が人生で初めて飲んだ炭酸飲料はスプライトである。レモンライムの風味が子ども心にも美味しかった記憶があるが、果たしてロシアではどのように味が再現されているのだろうか。

 カップに注ぐとどちらも無色透明。匂いはコーラと同じくスプライトの方が柑橘系の香りが強くさわやかな印象だ。対してストリートは砂糖の甘い匂いが強く、レモンライムの香りは控えめだ。正規品が香料が強く香る傾向にあるのかもしれない。

スプライトとストリート Ⓒ文藝春秋/撮影・平松市聖

 コーラと同じくロシア製のストリートから飲んでみる。口内に甘みと炭酸の刺激が広がった瞬間、思わず首をかしげてしまった。これはスプライトではない、とすぐに分かってしまうほどレモンライムの風味が感じられなかった。極端に表現すると“甘い炭酸水”といえるほど味気なかった。

 ただ、スプライトを最後に飲んだのは遠い昔。既に味を忘れてしまっていて、実際はスプライトも柑橘の風味はそこまで強くなかったのかもしれない。そう思いながら本物のスプライトを飲んでみる。その瞬間、記憶の底に眠っていた光景が脳裏に広がった。

 蝉が鳴きしきる真夏、近所の赤い自販機で買った初めての炭酸飲料。炭酸が痛くないかとこわごわ口に運んだあと、レモンやオレンジとは違う少しビターな風味と甘味が口いっぱいに広がる。心地よい炭酸が後味を爽やかにしてくれた。それは、確かに記憶の中のスプライトそのものの味であり、甘さをくどく感じさせない絶妙な柑橘の風味だった。

スプライトには一家言ある記者 Ⓒ文藝春秋/撮影・平松市聖

 一口だけならストリートもおいしく飲めるだろうが、一本飲み干すには味に飽きが来てしまうだろう。一方、スプライトはレモンライムの風味が甘味のくどさを緩和してくれるので、ごくごく飲めるようになっている。清涼飲料水としては明らかにスプライトの方が一枚も二枚も上手だった。