日本の参議院でも1/4が女性に
二大政党の国イギリス(22位)では、党の女性議員を増やす政策に関しても、党ごとの違いが明瞭に出た。労働党は1993年にクオータ制を導入し、1997年の総選挙で女性議員の数を倍増させて政権を獲得した(労働党の女性国会議員割合は1992年総選挙で14%(37人)、1997年総選挙で24%(101人))。だが、その後、クオータ制は「男女平等」を定めた「性差別禁止法(Sex Discrimination Act 1975)」に反するという雇用審判所の判断が示される。そこでトニー・ブレア政権は、2002年に「性差別禁止法」の方を改正し(改正された性差別禁止法は一般的にSex Discrimination Act 2022と呼ばれている)、その後もクオータ制を“合法的に”実行してきた。
英仏の例からは、クオータ制導入が男女平等の枠組みそのものの更新を伴っていたことが分かる。20世紀に法制度化されてきた普遍主義的(形式的)な男女平等の枠組みではリーダー的地位が男性に偏っているという不平等を「自然に」是正することができない。このことが明らかになったことを踏まえて、21世紀の初頭に男女平等の「枠組み」そのものを更新した上で、さらなる男女平等政策の領域に踏み込んでいったと言える。労働党の女性国会議員割合は、2010年総選挙で31%、前回の2019年総選挙で51%となった(注4)。
それに対して、保守党は、1980年代のサッチャー首相や2016年からのテリーザ・メイ首相と女性首相を輩出してきたが、女性国会議員比率は低い。保守党は2010年の選挙でも9%から16%へと上昇させたに過ぎず、現在も24%にとどまっている。
日本でも、欧州から数十年遅れでようやく、クオータ制の実装化が始まりつつある。2018年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(平成30年法律第28号)が施行されたことで、各政党が女性候補者比率の「目標数値」を定めるといった自主的な取り組みをすることになった。全ての政党に取り組みを求めたもので、実質的なクオータ制の導入である。
そして、ゆっくりとだが、前に進んではいる。
まだ2021年10月31日衆議院議員選挙では、目に見える結果は得られなかった。候補者に占める女性の割合は17.7%で(前回2017年衆院選時もピタリと同じ17.7%)、当選した国会議員に占める女性の割合は9.7%と、前回の10.1%よりも悪化した。
だが、今回、2022年7月10日の参議院議員選挙では改善した。候補者に占める女性の割合は33.2%(前回28.1%)、当選者に占める女性の割合は28%(前回22.6%)でどちらも増加した。これによって、参議院全体に占める女性議員の割合は25.8%となった(2022年選挙は補欠選挙分を含む)。
来年のジェンダーギャップ指数での日本の順位は改善するだろう。(#2に続く)
注1 本稿の各国の国会議員に占める女性の割合の数値は、Monthly ranking of women in national parliaments, Inter-Parliament Unionの2022年7月1日時点のデータに基づく( https://data.ipu.org/women-ranking?month=7&year=2022 )。上下院がある場合は、下院の数値を表記した。
注2 村上彩佳, 2019, 「フランスの事例 フランスにおける女性議員の増加のプロセスとその要因:クオータ制導入の頓挫からパリテ法の制定・定着まで」『内閣府男女共同参画 局推進課・諸外国における政治分野への女性の参画に関する調査研究報告書』pp.72-101. ( https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/gaikou_research/2019/09.pdf 2022年7月23日閲覧)
注3 中谷毅, 2010, 「ドイツにおける女性議員のクオータ制:ドイツ社会民主党の事例を中心に」『年報政治学』61(2), pp.48-67. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/61/2/61_2_48/_pdf/-char/ja )
注4 Grahame Allen, 2020, “General Election 2019: How many women were elected? “, 15 January, 2020, House of Commons Library, UK Parliament. ( General Election 2019: How many women were elected? (parliament.uk))