世界経済フォーラムが発行する『グローバル・ジェンダーギャップ・レポート』で、日本は今年も116位(146カ国中)という先進国最下位の悲惨な順位だった。
毎年その低い順位を巡って議論になる一方で、ジェンダー問題に取り組む人の中にもこのレポートに対して距離を取る人もいる。
その名の通り「経済」に主眼を置いたこの調査で、順位はどのようにつけられているのか。そして日本が圧倒的に「遅れている」と評価されている分野はどこなのか。それを理解するためには2000年代以降に世界で何が起き、日本で何が起きなかったかを理解する必要があるという。
「フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど」の著者である高橋幸さんに解説してもらった。(全2回の1回目/後編を読む)
調査の特徴は「リーダー的地位」への注目度
スイスのコロニーに本部を置く非営利財団「世界経済フォーラム」(前身は「ヨーロッパ経営者フォーラム」)が『グローバル・ジェンダーギャップ・レポート』を出すようになったのは2006年からである。
このジェンダーギャップ指数(gender gap index, GGI)は、社会の「リーダー的地位に占める女性の割合」の項目を含んでいる点が、これまでの他のジェンダー指標とは異なっている。「国会議員に占める女性の割合」や「管理職に占める女性の割合」などを含んでいる点が新しい。
そして、日本はこの新しい項目で全く点数を取れていないので、悲惨な順位となっている。
ジェンダーギャップは0から1のスコアに換算され、1に近いほどジェンダーギャップが小さいことを意味する。日本の保健分野(「健康と生存」)は0.973、教育(「教育的達成」)は1(というのも、今回の日本のギャップ測定において大学進学率データが計測されていないからで、その理由は不明である)だが、「経済的参加と機会」は0.564(121位)、「政治的エンパワーメント」は0.061(139位)となっている。つまり、政治および経済の分野でのジェンダーギャップが大きい。
欧米諸国で重視され、とくに2000年代以降に強力に進められてきた「ガラスの天井」を打ち破るためのリーダー的地位のジェンダー平等化がいまだにできていないのが日本の特徴である。
このことを踏まえると、なぜ日本はここまで遅れてしまったのか? と問うよりも、むしろ、なぜ2000年代以降の欧米でここまで急速にリーダー的地位をめぐる男女平等政策が進んだのか? そして、具体的にはどのように進んできたのか? と問うてみた方がいいかもしれない。
まずは「ジェンダー」をめぐる2000年代の国際社会の大きな潮流を見た上で、次に具体的な政策がどう進んできたのかを見ていこう。