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「そこまでなら通れますよ!」とゲートを動かしてくれた。これでやっと両親宅へ行ける。そう思ったのも束の間、前方をよく見ると、道が無い。

 2車線ある車道の大部分が、道路の南側を流れる日野川によって削り取られていたのだ。崩れ落ちた路面に、オレンジ色のセンターラインが一部だけ残っている。

車道の大部分が濁流によって削り取られていた

 現場の方の指示に従い、歩道に乗り上げて可能な限り北側に寄って走行する。南側はアスファルトが残っていても、その下に地面があるとは限らない。アスファルトごと崩れ落ちて川に転落してしまうかもしれない。通行させてくれたことはとてもありがたい。とはいえ、生きた心地はしなかった。ゲートを開けてくれたとはいえ、こうした場面では当然のことだが、自己責任での通行となる。

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標識はあるが、そこに道はない

 慎重に通り過ぎたが、その後もアスファルトが剥がれていたり、沢の水が道路上を横切っていたりと、難所が続く。何度も通り、見慣れたはずの道路だが、あまりにも変わり果てており、現実の光景とは思えなかった。

事前の想像を遥かに上回る被災状況

 慎重に運転して両親宅に到着すると、二人ともお元気そうで、ようやく緊張が解ける。

 発災時のことを聞くと、経験したことがない大雨が長時間降り続いていた当時のことを話してくれた。

 バケツをひっくり返すというよりも、「消防のホースで放水されているような状態がずっと続いた」「集落を流れる小川に架かっている橋に、上流から流れてきた建築資材が引っかかっていた」「1時間後に様子を見に行くと、橋ごと流されて無くなっていた」のだという。

大量の漂着物が積み上げられていた

 避難所に行くこともできず、濁流が自宅まで30センチの距離に迫ったそうだ。家のすぐ裏は山の斜面である。不安な夜を過ごしたことは容易に想像できる。

「集落内にも土砂が流入していて、沢の水が道路上に流れ続けている……」とも伝えてくれた。そこで、私は「水の流れだけでも変えることができないか……」と、車からショベルを取り出して現場に向かった。

 しかし、現場を見ると、事前の想像を遥かに上回る状況であった。