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〈現地写真多数〉「今まで、こんなこと一度もなかったのに…」豪雨被災者がこぼした驚きと悲しみが入り混じった“悲痛な心情”

東北・北陸大雨被災地ルポ

2022/08/11
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全ての道が物理的に通ることのできない状態……

 重機で作業をしていて通れなかったため、休憩のタイミングを待って声をかけてみる。事情を話すと、「この先の状況は分からないが、とにかく行けるところまで行ってみなさい」と言ってくれた。道路上の障害物を避けて蛇行しながら走行したが、福井県に入ったところで道路上の大量の土石流に遭遇。それ以上進むことはできなかった。

 
土石の流出があらゆる場所で発生している

 国道8号は通行止めが続いている。並行する海沿いの国道や、実質的に廃道となっている県道で迂回を試みたが、いずれも失敗に終わった。そのほか、計9つのルートの可能性を探ったが、結局、全ての道が物理的に通ることのできない状態だった。この日は、南側からは絶対に両親宅へ行けないことを確認し、帰宅した。

 昔から豪雨災害は日本中で発生していた。台風を起因とするものがほとんどだったが、近年では単に大気の状態が不安定というだけで線状降水帯が発生し、豪雨災害に発展することも少なくない。

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2004年福井豪雨JR越美北線

 大量に降った雨は濁流となり、川に架かる橋を押し流してしまう。山の許容量を超える豪雨は、土砂崩れや土石流を引き起こす。2018年の西日本豪雨や、2021年の熱海市伊豆山で発生した土石流災害は記憶に新しいだろう。土石流のパワーは凄まじく、家屋を簡単に粉砕する。

2015年東日本豪雨茨城県常総市

 また、河川に流れ込んだ大量の雨は、氾濫を発生させる。川から溢れた水は、人や車を押し流し、簡単に人命を奪ってゆく。岐阜県の可児川で2010年に発生した災害では、奥様が流され行方不明となっている男性から、直接話を聞いた(詳細はこちらの記事で紹介している)。思いもよらない瞬間に日常が終わり、それは二度と戻ってこない。とても他人事とは思えなかった。

 翌日、発災4日後となる日曜日は早朝からスタートし、東海北陸道と国道158号で大きく北側へ回り込んだ。このルートで福井市方面へ行けることは分かっていたが、その先、南越前町へは通行止めの情報が出ていた。そのため前日は避けたのだが、もうこのルートしか可能性が残っていない。

災害の生々しい痕跡がいたるところに

 途中、検問があったが、南越前町に行きたいと伝えると通してくれた。今庄駅が近づいてくると、災害の生々しい痕跡が目に入ってくる。見慣れた店が泥まみれになっている姿が視界に入る。心が痛い。

バリケードで封鎖された道

 駅前を過ぎると、バリケードが設置されていて足止めされてしまった。両親の家は、まだ先だ。もうこの道にしか、可能性が残っていない。私はバリケードの前に立っている方に声をかけた。

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