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〈現地写真多数〉「今まで、こんなこと一度もなかったのに…」豪雨被災者がこぼした驚きと悲しみが入り混じった“悲痛な心情”

東北・北陸大雨被災地ルポ

2022/08/11
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地元を知り尽くした「土建業者」の尽力

 被災地域では、多くのダンプカーや重機が行き交い、砂煙が舞い上がっている。大規模な災害が発生した時、人命救助をする上で真っ先に行うことは、道路を切り開くことだ。多くの救助隊が現地に入り、負傷者を運び出すためには道路が必要不可欠だ。道路上の瓦礫や土砂を取り除いて、とにかく緊急車両が通れるようにすることを“道路啓開”という。

 その後、道路を整えて復旧し、一般車両も通れるようにする。そうすることで食糧などの物資の輸送が可能となり、助かった命を繋ぎとめることができる。

地元の土建業者の方々が復旧作業の中心的役割を担っていた

 道路啓開や復旧の作業には多くの組織が携わるが、その中心にいるのは、いつも地元の土建業者だ。すぐ動ける距離に重機があり、オペレーターがいる。何よりも地元を知り尽くしている。民間企業の人たちだが、時には二次災害の危険も顧みず、命懸けで作業にあたる。

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 土建業者は、普段は道路や建物を造ったり、維持管理を仕事としている。だが、ひとたび災害が発生すると、人命救助の最前線で活躍するのだ。公共事業を削減すると、廃業を余儀なくされる土建業者も少なくない。

 無駄な公共事業は削減されるべきだ。つまり、無駄な事業に税金を使うことが問題であろう。人々の役に立つ公共事業を継続的に発注し、各地で頻発する災害に備えておくのは、必要なコストであるとも私は考えている。

 義母を自宅に送り届け、帰路についた。行き着くまでに2日を要し、帰りも大きく迂回して大変な道のりだったが、来た意味はあったと思う。現地に来ず、テレビ等の報道だけを見ていれば、ここまで大きな被害が出ているとは分からなかっただろう。

 そして、完全に分断されてしまった道路や鉄道を一刻も早く復旧させようと奮闘する人々や、浸水した家屋の片づけを手伝う多くのボランティアの人々の姿があった。

ボランティアと思われる人々の姿も目立つ

 現地に来たからこそ分かったこと、現地に来なければ得られないことは、実に多い。

 現在、鉄道や主要道路は急速に復旧が進んでいる。国道8号は8月9日に片側交互通行で開通し、北陸道も上り線のみではあるが10日に通行止めが解除された。JR北陸本線はお盆直前の11日に運転を再開するなど、分断状態は解消された。

 生きた心地がしなかった崩れかけた道だが、実は歩道と車道の間にある縁石を全て撤去し、道路啓開によって通行可能とした道だった。さらに驚くことに、私がヒヤヒヤしながら通行した翌日、北側に新たな舗装路が完成し、安全に通れるようになったと、義母から報告があった。災害からわずか数日で、何もなかったところに舗装路が新設されていた。被災したインフラの復旧の速さには、いつも驚かされる。土木の力は、災害時にこそ真価を発揮するのだと思う。

 災害で負傷された方のご快復と、被災された全ての方が一日も早く日常を取り戻し、安心して生活できる日が訪れるよう、心から願っている。

〈現地写真多数〉「今まで、こんなこと一度もなかったのに…」豪雨被災者がこぼした驚きと悲しみが入り混じった“悲痛な心情”

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