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「かつての年収は3億」元総会屋が抱く“三菱電機”株主総会への“違和感”「社長のサラリーマン化が招いた“不手際”とは?」

変わりゆく株主総会 #3

2022/08/15
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昨年の株主総会終了後の夜に不正を公表

 さらに、長年にわたって検査不正が改まることがなかった理由や背景についても解説する。

「社長のサラリーマン化、小役人化だ。企業の社長の在任期間はだいたいどこでも4年から長くて6年ほど。何十年も社長の座に居座る人もいるが、これは特異な例。すると数年間の社長でいる際には不祥事のようなことは何も起きないでほしい、不祥事が内部で明らかになっても外部にはバレないでほしいと願うものだ」

 三菱電機は昨年の検査不正をめぐって、株主総会を明らかに軽視した悪質な行為を犯している。最初に公になった鉄道用の空調機器の検査不正が、社内の調査で分かったのは2021年6月14日だったが、その後、記者会見などで不正が行われていた事態を公表せず、同年6月29日に開催された株主総会でも説明しなかった。

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 株主総会終了後の同日夜になって、ようやくマスコミ向けのプレスリリース(広報文)を出して、不正を公表する形となり、翌30日の新聞各紙で大体的に検査不正の報道が始まったのだ。

97年の幹部逮捕で、総会屋業界と絶縁していた

 前出の元総会屋はこうした対応を厳しく批判する。

「本来は株主総会の場で社長が、『実は製品の検査で不正がありました。おわびします』と謝罪とともに事情説明をしなければならない。これが株主に対して誠意あるまともなやり方。株主総会で説明しないのはおかしい」

 こう批判したうえで、「不祥事については、後にマスコミに記者会見で説明するので、改まって説明する必要はないという考えだ」とも付け加えた。

 2021年6月の株主総会では説明がなかったため、昨年の不祥事発覚時に社長だった杉山の後任である漆間が1年後の今年の株主総会で謝罪と事情を説明することとなった。

三菱電機の定時株主総会で発言する漆間啓社長のモニター画面 ©共同通信社

 三菱電機をめぐっては1997年11月、「中本総合企画」というグループを率いていた総会屋の中本貞次に違法な資金提供をしていたとして、警視庁に商法(現・会社法)違反(利益供与)容疑で摘発され、幹部が逮捕された経緯がある。三菱電機はその後、総会屋業界と絶縁していた。

「年収は3億円」と語っていた前出の元総会屋も三菱グループを得意先としてきたが、事件後は交流を絶たれていた。今回の三菱電機の検査不正を含め、その後も企業社会をウオッチし続けてきた経験から批判を口にしたのだ。

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