社長選任案に事実上の「ノー」
今年の株主総会の特徴のひとつとして、企業トップの謝罪が相次いだが、三菱電機以外で明らかになった主な不祥事は以下である。
・1月 東レがプラスチック部品原料の樹脂製品安全性検査で不正と発表
・3月 日野自動車がエンジン型式検査で不正を発表
・3月 SMBC日興証券幹部らが相場操縦事件で逮捕
・5月 日本製鋼所が発電設備のタービンで約24年間の検査不正を発表
・7月 コスモ石油がガソリンや重油等の検査で30年近く不正と発表
今年の株主総会のさらなる特徴として挙げられるのは、不祥事が明らかになった企業では社長選任案に事実上の「ノー」を突き付ける議決が相次いだことだ。
東レでは社長の日覚昭広の取締役選任案の賛成比率が約64%にとどまった。日野自動車では社長の小木曽聡は約67%。三菱電機では社長の漆間の賛成比率は6割を切って約58%となった。いずれも前年の株主総会では90%前後の賛成比率だったため、解任要求と言えなくもない結果だった。
「社長失格の烙印を押されたようなもの」
年間3億のカネを集めていたという前出の元総会屋がこの点について持論を述べる。
「社長選任の賛成が6割というのは、社長失格の烙印を押されたようなものだ。多数決で決まるのはその通りだが、過半数を取ればよいということではない。反対した残り4割の人たちが何を考えているか、経営陣は分かっているのかとなる。会社側は『反対する株主の意見を大切にします』『対処を考え、努力します』などと答えるが、その程度の答えで反対の株主が納得するか」
そのうえで、「過半数だから議決は通るが、社長の能力が不安だから40%の反対がある。社員向けの話だったらこれでよいが、株主への答えになっていない。社長でなくともこの程度の話は出来る。社長としての言葉で説明してほしいと株主は要求しているのに、説得力がない」とも言及した。
社長選任案が事実上解任と言われかねない6割前後の議決となっても、それでも経営を任せてほしいというのであれば説得力ある言葉が必要だ。不祥事が発覚するなどの危機的な状況にある時こそ、そうした言葉を発信できるリーダーシップが求められている。(文中敬称略、一部の肩書は当時)