「中でも一番あおいさんが驚いたのは本人も知らない間に妊娠していた上、気付かない間に臨月となり、ふたりが住んでいた家の風呂場で出産したことだ」
かつてホス狂いYouTuber・あおいさんは、歌舞伎町を根城とするさまざまな「問題児たち」とシェアハウスをしていた。家賃4万円、六畳一間のワンルームの「ホス狂いシェアハウス」に集まったルームメイトたちとの壮絶な暮らしとは? フリーランス記者の宇都宮直子氏の新刊『ホス狂い〜歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る〜』より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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なぜ「“ホス狂い”ユーチューバー」に?
あおいさんは「“ホス狂い”ユーチューバー」と名乗り始めた理由について、こう明かす。
「もともと自分が“ホス狂い”で、自分のバーでも、お客さんとホストの話をしていたということもありました。私も最初は『“ホス狂い”って、人に言えなくないですか?』と思っていました。でも、誰が作った言葉かはわからないですけど、今ではもう“ホス狂い”はもう、ひとつのジャンルであり、ブランドになってると思う。歌舞伎町でお金を稼いで、お金を使う。この町ではお金を回すことが、正義であり、“仕事”なんです。“ホス狂い”はまず、どんな形であれ稼いでいて、お店でお金を使っていなければ名乗れない。“稼いで”“お金を使う”ことができる“ホス狂い”は、この歌舞伎町では、職業であり、肩書でもあるんです」
ホス狂いは歌舞伎町での“ブランド”。あおいさんのこの言葉で、私はSNS上で「ホス狂い」を自称する女性たちや、いちごチェリーさんがどこかはにかみながら「ホス狂いなんです」と笑う気持ちが少しわかったような気がした。歌舞伎町においてこの肩書は、ホストクラブの卓で輝く「飾りボトル」のようなものなのかもしれない。
あおいさんは、バーの店長とYouTubeチャンネルを始めてから、プライベートでホストクラブに遊びに行くことはほとんどなくなったという。
「バーで働き始めたこともありますが、やはり一番の理由はYouTubeを始めたことですね。番組でホストさんと絡むようになったことは大きいです。ただ、友達のお付き合いなどでたまに顔出すくらいのレベルで遊びにいくことは未だにあるし、店に来てくださったホストさんのお店に、こちらがお礼に飲みに行く“同業返し”もありますから“ホストを卒業した”わけではなく、“ホス狂いを卒業した”という感じです(笑い)」